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サントリー学芸賞

選評

政治・経済 1979年受賞

小池 和男(こいけ かずお)

『労働者の経営参加 ―― 西欧の経験と日本』を中心として

(日本評論社)

1932年、新潟市生まれ。
東京大学大学院応用経済学博士課程修了。
東京大学社会科学研究所助手、法政大学経営学部助教授を経て、現在、名古屋大学経済学部教授。
著書:『日本の賃金交渉』(東京大学出版会)、『職場の労働組合と参加』(東洋経済新報社)など。

『労働者の経営参加 ―― 西欧の経験と日本』を中心として

 小池和男氏は、わが国の労資関係にかんする実証研究を広い視野のもとにつみ重ねてこられた。今回、受賞の直接の対象となっている『労働者の経営参加』のほかに、『職場の労働組合と参加 労資関係の日米比較』(1977年)や『学歴社会の虚像』(共著 1979年)があり、これらすべての業績は、氏の実証研究の周到さと視野の広さ、そして何より既存の通説に疑問を投げかけこれをつぎつぎにひっくり返して行く知的勇気に特徴づけられている。社会科学研究書がこのような知的爽快さを与えるのはきわめて稀である。
 わが国の「通説」はモデルを西欧社会におき、わが国の現実がそこからいかに離れているかを説く自虐的プロトタイプが多いのに対して、氏は明快な説得力で、西欧にはそれなりの建前と現実のギャップがあること、そしてわが国は多くの点で西欧の建前をわが国なりに現実のものとしていることを指摘される。
 1980年代のわが国の社会科学の方向がおのずから示されている。

森口 親司(京都大学教授)評

(所属・役職等は受賞時のもの、敬称略)

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