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サントリー地域文化賞 サントリー地域文化賞

活動詳細

愛媛県

愛媛県 西予市 2024年受賞

全国「かまぼこ板の絵」展覧会
かまぼこ板を使った作品募集と展覧会を続け、地域活性化に貢献

代表:森岡 光雄 氏

2024年10月更新

活動紹介動画(02:00)
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全国「かまぼこ板の絵」展覧会

 愛媛県西予市城川町は、愛媛県南西部に位置する人口約2,700人の中山間地域である。森や棚田に囲まれたこの地区にある小さな美術館「ギャラリーしろかわ」では、毎年かまぼこ板を使ったユニークなイベント「全国『かまぼこ板の絵』展覧会」が開催されている。

 「ギャラリーしろかわ」は、1993年に城川町立美術館(現・西予市立美術館)として開館。町職員だった浅野幸江氏は、オープンと共に美術館に着任した。1年目は多くの入館者が訪れたものの、翌年には閑古鳥が鳴く状況に。美術館運営のノウハウもない中、何か人を呼ぶ工夫をしなければと考えていたところ、講演会で美術館に訪れた洋画家の折笠勝之氏より、「絵は誰でも、どこでも、何にでも描ける」と、かまぼこ板に描かれた絵を贈られた。この贈り物がヒントとなり、かまぼこ板に描いた絵の募集と美術館での展覧会を企画した。

 予算もなく、何もかもが手探りの挑戦だったが、全国紙に募集告知が掲載されたことが追い風となり、1995年の初回から10,891点の作品が全国より寄せられた。応募された作品を展示する展覧会には約2万人が訪れ、山の中の小さな美術館に「人が湧いてでるようだった」と浅野氏は振り返る。それから毎年作品を募集し、展覧会を続けてきた。

 応募する作品は、かまぼこ板に描いたものであれば、絵のテーマは自由。かまぼこ板は100枚まで使用可能で、小さな板一枚に緻密な絵を描く人もいれば、かまぼこ板を何枚も組み合わせ、大きなキャンバスにする人もいる。これまでに0歳の子どもから108歳の高齢者まで幅広い人々から応募があり、誰でも参加できる身近さがある一方、プロの画家も本気で制作するような魅力もあるという。審査員による4日間の審査では、体育館にずらりと応募作品が並べられ、大賞、優秀賞をはじめとする受賞作が選ばれる。

 捨てられる運命のかまぼこ板に新しい命を吹き込むこのイベントに魅入られたのは、西予市内、愛媛県内在住者だけではない。これまでに日本全国にとどまらず、世界の30か国以上からも応募があった。

 展覧会では、「小さなかまぼこ板に描かれた絵には、応募者の想いや人生が詰まっている。単なるコンテストではなく、応募者一人ひとりを主役にしたい」と、受賞作だけでなく、全ての作品を展示することにこだわっている。近隣の人だけでなく、自分の作品が飾られている様子を見ようと多くの応募者も訪れることで、地元に活気が生まれた。中には、遠方から毎年必ずこの展覧会を見に訪れる「常連」もいるという。人と人との交流を積み重ね、いまや西予市の代名詞とも言える存在となったこのイベントが、これからも発展し続けることを期待したい。

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