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サントリー地域文化賞 サントリー地域文化賞

活動詳細

福井県

福井県 勝山市 2024年受賞

勝山左義長ばやし保存会
お囃子の担い手を広げ、伝統のまつりの活性化と次世代継承を牽引

代表:桝家 淳一郎 氏

2024年10月更新

活動紹介動画(02:00)
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勝山左義長ばやし保存会

 福井県東北部に位置する勝山市は江戸時代に城下町が整備され、明治以降は繊維産業を中心に発展した。2月最終の土日、この町で300年以上の歴史を誇る勝山左義長まつりが開催される。

 まつりの二日間、旧城下町にあたる中心市街地の通りには色とりどりの短冊がなびき、住民が趣向を凝らして制作した干支などにちなんだ作り物や絵行燈が飾られ、町は一気に活気づく。その中でひときわ注目を集めるのが、二階建て高さ約6mの櫓で披露される勝山左義長ばやしだ。12地区に設置された櫓には赤い長襦袢姿の老若男女があがり、三味線と唄、鉦、笛、太鼓によるお囃子を地区ごとに披露する。中でも特徴的なのは三人による太鼓だ。一人は基本の拍子を刻み、一人は太鼓に腰掛けて音を抑える。もう一人は「浮き方」と言われ、おどけた仕草で踊るように打つ。浮き方は一曲の中で次々と交代して表情豊かな所作を繰り広げ、観客を魅了する。

 昭和初期、お囃子は当時勝山に多くいた芸妓が各地区から依頼され、町内で太鼓や笛に覚えのある男衆と共に奏でていた。1950年設立の保存会も、当初は一部のまつり関係者と芸妓たちのための団体だった。しかし芸妓の減少により、保存会の存続はもとよりお囃子の担い手不足が懸念されるようになった。

 1970年、大阪万博が転機となった。保存会のとりまとめで各地区の住民や芸妓たちが一丸となってお囃子を披露し、大好評を博した。地元でもお囃子を盛り上げたいという声が高まり、同年まつりで各地区の子どもたちが技を競う「子どもばやしコンクール」が保存会の運営で開始された。1983年からは「おはやし講習会」を開始。初心者が一から学べるため、子どもの親を中心に興味を持った一般女性が三味線や笛を習って活躍できるようになり、活性化の原動力となった。

 現在の保存会は、約半数が高校生以下。地区を超えて約40人のお囃子好きのメンバーが集まり、週一回の練習と地元小学校での指導、出張出演などを行っている。出演依頼は県内外からあり、年間20回を超えることもある。まつりや出演時の若い世代の活躍は目覚ましく、子どもたちの憧れにもなっている。

 近年まつりの行われる中心市街地は少子高齢化や人口減少で、お囃子の担い手確保が難しい地区も出てきた。そこで保存会では2023年から中心市街地から離れた地域の小中高生向けに、お囃子の楽しさを伝える「体験会」を開催。各地区の住民の理解を深めながら、地区を超えて広く子どもたちにまつりへの参加を呼びかけたいと考えている。今後も保存会は各地区のお囃子継承のサポーターとして、また次世代継承の牽引役として、ますますの活躍が期待されている。

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