活動詳細
新潟県 関川村 2024年受賞
えちごせきかわ大したもん蛇まつり
村の全集落でつくる大蛇が練り歩き、水害の記憶を継承するユニークなまつり
代表:加藤 弘 氏
2024年10月更新
関川村は新潟県の北東に位置し山形県と隣接する。清流・荒川に沿った米沢街道に温泉郷が点在し、中心部に国指定重要文化財「渡邉邸」をはじめ18世紀のまち並みが残る人口約5,000人の村である。この村で毎年8月、竹とワラでできた大蛇がパレードする「えちごせきかわ大したもん蛇まつり」が行われている。
過疎化が進み人のつながりが薄れていくことが危惧されていた関川村では、若者を対象に人材育成を行う「せきかわふるさと塾」を1987年に開塾した。村の魅力を発見し、村に生きる喜びと自信を持ってもらうことも塾の目的の一つだった。当時の村には、地域ごとのまつりはあったものの、全住民が参加できるものがなかった。そこで塾生が中心になって新しいイベントとして考案し、翌1988年に開催したのが、「えちごせきかわ大したもん蛇まつり」だ。
関川村には「大里峠」という、川をせき止め村を湖にしようとする大蛇の伝説があり、これまでに何度も水害に見舞われている。なかでも1967年8月28日に発生した羽越大水害では多くの犠牲者を出した。「大したもん蛇まつり」では、大水害の記憶を継承するため、大蛇の長さを災害発生の日にちなんで82.8メートルとした。巨大なヘビの胴体を54のパーツに分け、村内54の集落が分担して竹とワラで作る。それを組み合わせた巨大な大蛇みこしが、8月28日に村中を練り歩いた。
その後も毎年8月にまつりを継続して開催し、現在の大蛇は9代目となる。ヘビを新装するたびに、村の特産品である米の稲わらを使って全集落が協力して制作する。2001年には「竹とワラで作られた世界一長い蛇」としてギネス世界記録にも認定され、今では新潟を代表するまつりの一つとなっている。かつての「ふるさと塾」のメンバーは、現在村や地域の中枢を担う人材に育ち、新しい世代がまつりを支えている。
約2トンの大蛇みこしを担ぐには500人の人手が必要となる。人口の減少にともない担ぎ手の不足を危惧した村出身の学生が、国際ボランティア学生協会(IVUSA)に呼びかけたことがきっかけとなり、毎年約100人の学生が大蛇パレードのために村を訪れる。さらに、関川村で行われるさまざまなイベントにもスタッフとして参加するなど、都会の学生との交流が生まれている。
2020年からのコロナ禍と2022年の新潟県北部豪雨のため、まつりは3年間休止したが、2023年には豪雨被害からの復興の願いも込めて復活した。
日本各地で災害が頻発する中、防災におけるコミュニティの役割は大きくなっている。自然の猛威を伝え、人のつながりを生む「大したもん蛇まつり」は、小さな村の大きな財産といえる。