活動詳細
群馬県 高崎市 2024年受賞
たかさき絵本フェスティバル
絵本の魅力を伝えたいという熱意で原画展を毎年開催、絵本文化の向上に寄与
代表:續木 美和子 氏
2024年10月更新
群馬県高崎市で毎年冬に行われる「たかさき絵本フェスティバル」。約2週間の会期中、会場の高崎シティギャラリーの展示室には色とりどりの絵本原画が並び、絵本を楽しむ人々の笑顔があふれる。
始まりは1994年。高崎市で絵本書店を営む續木美和子氏は、アメリカの貴重な絵本原画の展覧会が、全国の主要都市を巡回することを知った。「東京ではなく、地元高崎で家族や友人と芸術鑑賞をしたい」という想いから、当時書店で開いていた絵本の勉強会に集まった仲間たちを中心に、「時をつむぐ会」を結成。出版社のつてをたどり、高崎への絵本原画展の誘致を決心した。
誘致にかかる費用の350万円に対し、県からの補助金は20万円。残りはメンバーを中心とする多くの仲間たちで、必死に売り歩いたチケット収入でまかなった。結果として第1回原画展(1995年)は約1万人が来場し大成功。会場となった高崎シティギャラリーには、連日人が押しかけた。第2回(1996年)以降は企画から運営まで全てを自分たちで行い、以後毎年1〜2月に約2週間の会期で開催し、2024年には第30回を迎えた。
展覧会では、毎年5〜6作品、100〜150点の原画を額装して飾る。「絵本を読むように原画を楽しんでほしい」という想いから、表紙と裏表紙を含む全ての原画を展示することが、この展覧会のこだわりだ。子どもの目線に合わせて低い位置に飾られた原画には、絵本の文章も添えられている。
展覧会の準備は一年がかりの大仕事。展示する絵本の選定から始まり、絵本や作家についての勉強会を重ねながら、時には出版社にも訪問して原画の貸し出し交渉や展示内容の検討を進める。展示室の照明や什器の設置も、プロの手を借りながら自分たちで行い、チラシや展示パネルもデザインが得意なメンバーが作成している。展覧会が開幕するとメンバーらが展示室に常駐し、来場者に作品や作家について解説しながら、会話を楽しむという。また、会期中には作家や出版関係者によるトークイベントも開催し、会場では絵本の販売も行う。
そしてこのイベントは展示室だけにとどまらず、地域の中にも広がる。会期中には市内の花屋や飲食店、美容室や映画館に協力を依頼し、メンバーたちが選んだ絵本を詰め込んだ「まちなか絵本ぼっくす」を設置。その場で絵本を読むことができるほか、展覧会チケットの購入もできる仕組みだ。また、公立図書館がその年の原画展の内容に合わせた特設コーナーを設けることもあるという。
「絵本が好き」というメンバーたちの熱意がつくり上げる「たかさき絵本フェスティバル」は、子どもたち、作家、編集者、絵本を愛する全ての人々をつなぐ存在として、これからも続いていくだろう。