活動詳細
愛知県 瀬戸市 2020年受賞
<特別賞>
せとひとめぐり
コロナ禍でも創意工夫を凝らし、人との出会いを楽しめる街巡りを開催
代表:南 慎太郎 氏
2021年1月更新
愛知県瀬戸市は、1000年以上の歴史を持つ“やきもの”の町であり、「せともの」の語源としても知られる陶磁器産地である。毎年9月に開催される「せともの祭」は、日本三大陶器祭のひとつに数えられ、瀬戸川沿いに並ぶ200軒の露店は初秋の風物詩となっていた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、毎年多くの買い物客でにぎわうこの祭りも今年は中止を余儀なくされた。この中で、何とか代替イベントを開催したいと自発的に行動を起こした若者たちの熱い思いから生まれたのが「せとひとめぐり」である。
日本各地で祭りやイベントが次々と中止に追い込まれる中、なんとか活動を継続させようと努力する人たちの多くは、当初オンラインに活路を見出そうとしていた。しかしその状況にありながら「せとひとめぐり」の運営メンバーは、人と会うことをあきらめなかった。クラウドファンディングで資金を集めて活動を立ち上げ、創意工夫を重ねて“対面交流型”の企画を実現したところに、このイベントの特徴がある。
「せとひとめぐり」は、観光客が瀬戸市中心部の商店や郊外の窯元を自由にめぐって人とまちを楽しむイベントで、「せともの祭」が開催されるはずだった9月12日(土)、13日(日)に開催された。5人の運営メンバーは、対象の商店や窯元を紹介するWebサイトを立ち上げたほか、新型コロナウイルス感染拡大防止策として、参加者からの情報をもとにTwitter等で定期的に混雑状況を発信する仕組みも整えた。また、訪問先の商店や窯元でちょっとしたサービスを受けられる「はりきりチケット」を販売するなど、参加者同士の交流を促す仕掛けも導入した。参加した商店・窯元は合計27軒、2日間合計の集客は推定5000人と、例年の「せともの祭」の規模には及ばないものの、むしろ商店主や窯元の職人が観光客とゆっくりコミュニケーションをとる余裕が生まれ、瀬戸の良さを直接伝える機会に恵まれたことは、新たな発見であったという。
「せとひとめぐり」は、街巡り、Webサイト、Twitterといった要素の巧みな組み合わせと、運営メンバーの熱意と創意工夫によって新たな価値を創出することに成功した。困難な状況の中で若者のエネルギーが新たな可能性を拓いたこと、またそれによって市内中心部の商店主と郊外の窯元の職人との間に新たな交流が生まれたこと等、この取り組みには、今後の地域文化活動の活性化に向けたヒントがちりばめられている。新型コロナウイルスの感染拡大に苦しむ全国の活動家が、逆境を乗り越え新たな活動を生み出すきっかけになることを期待する。