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サントリー地域文化賞

活動詳細

北海道

北海道 函館市 2019年受賞

函館西部地区バル街
食べ歩きを通じた街角での社交を創出

代表:深谷 宏治氏

2019年10月更新

活動紹介動画(02:00)
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写真
函館西部地区バル街

 函館の旧市街である西部地区は、歴史的建造物が残る美しい街並みが人気で多くの観光客が訪れる。しかしこの地区以外に住む多くの市民にとっては、用事がなければわざわざ行かない「観光の町」。観光客がいなくなる夜には人影少なく寂しい雰囲気となる。ところが春と秋の年2回、夕暮れ時から多くの市民が西部地区に繰り出し、一気に華やぐ夜がある。「函館西部地区バル街」が開催される日だ。

 「函館西部地区バル街」とは、参加店を掲載したマップを見ながら街を巡り、事前に購入したチケットと引き換えにドリンクとおつまみを味わう、「食べ・飲み・歩き」を楽しむイベント。2004年に行われた「スペイン料理フォーラムin HAKODATE」の前夜祭としての企画が発端だ。発案者であるスペイン・バスク料理店主の深谷宏治(ふかやこうじ)氏は、バスク地方の旧市街で盛んなバル(立ち飲み居酒屋)巡りの文化をこの西部地区で再現することで、地域の人々に楽しみながら街への愛着を感じて欲しいと考えた。料理人仲間や、この街への熱い思いを共有する友人たちと実行委員会をつくり、企画を実現させた。

 当初は1回限りの予定だったが、参加した市民から「楽しかった!」「西部地区を見直す機会になった」と継続を熱望する声が寄せられ、翌年以降も実施。2019年の春には31回目を迎えた。市民にとっては、日ごろ訪れることの少ない西部地区に立ち寄り、お気に入りの店を見つけるきっかけとなった。それ以上に、マップを手に街をそぞろ歩くうちに、知らないもの同士でも会話がはずむ「街角での社交」の非日常感が楽しみとなっている。店にとっては、地元の客との新たな出会いだけでなく、普段のメニューとは異なる一品を仕立てるチャレンジの機会にもなっている。

 15年間で参加店は25店から80店以上に、5枚つづりのチケットの販売数は400冊から4,000冊以上に増えた。一夜に4,000人以上の市民が西部地区バル街に集うことで、市民によるライブや着物の着付けなど、他の文化活動も生まれている。バル街の活動は全国から注目を集め、実行委員会への問い合わせや視察の申し入れが絶えない。それらに対し惜しみなく助言し、ノウハウを提供してきた結果、同様のイベントは日本中に広がり、今日では数百ヵ所で開催されている。

 バル街の活動の目的は地域活性や観光振興というより、あくまで「みんなで街を楽しむため」。行政の補助金や大手企業からの助成金などに頼らない自由な運営がポリシーだ。2009年からは、国内外の名だたる料理人が集まり料理哲学を語る「世界料理学会in HAKODATE」も開催されている。函館の街を舞台に、楽しみながら独自の食文化を発展させようとする、陽気な仲間たちの野心的な試みから、これからも目が離せない。

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