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サントリー地域文化賞

活動詳細

四国

愛媛県 松山市 2018年受賞

へんろみち保存協力会
歩き遍路に役だつ情報の提供と遍路道の保存修復に貢献

代表:関 宏孝 氏

2018年10月更新

活動紹介動画(01:58)
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写真
へんろみち保存協力会

 四国では平安時代より、空海が修行した地を巡拝する僧や山伏が存在したが、現在のような八十八ヵ所の札所を巡る巡礼路が定着したのは、17世紀後半のことである。その後庶民にも遍路文化が根付き、人々は約2ヵ月をかけて徒歩で四国を巡った。しかし、1950年代半ば以降、観光バスや自動車での巡拝が徐々に主流になり、歩き遍路を行う人は減少した。

 このような状況の中、愛媛県松山市の宮﨑建樹氏は、1979年に初めて歩き遍路を行った際に荒廃した道の状況を目の当たりにし、1987年に「へんろみち保存協力会」を設立して道の保全活動を開始した。「協力会」を名乗ったが、「山道では道標の向きひとつがお遍路さんの命に関わるため、自ら責任を持って行いたい」との考えから主な作業は一人で行い、四国中の約2000ヵ所に道標を設置した。1990年には歩き遍路向けのガイドブック『四国遍路ひとり歩き同行二人』を自費出版。地図には目印となる建物や飲食店が詳細に記載されており、歩き遍路をする人にとって心強い存在となった。また、地域住民らと協力して、遍路道の草刈りや補修も行った。荒れた道の修復を行う際には、昔の様子を知る古老から話を聞き、住民や役場の職員と共に復元を試みた。これらの道は、現在でも地元の人々によって守られている。

 こうした活動が知られるようになると、宮﨑氏の元には、遍路道についての様々な相談が寄せられるようになり、道標やガイドブックに助けられたというお遍路さんの声も数多く届いた。しかし、2010年に宮﨑氏が遍路道の調査活動中に山中で遭難し逝去。活動は遺族が引き継いだが、遠方に住んでいたこともあり、継続には困難も多かった。そこで、2015年に「宮﨑氏の活動を続けたい」という有志らが松山市内に事務局を立ち上げ、2017年には一般社団法人化した。

現在、同会では遍路道の整備やガイドブックの改訂作業を引き続き行っている。道の保全活動では、険しい山中の点検も怠らない。さらに、同会が運営するホームページ上で、歩き遍路に関する情報収集・発信活動にも力を入れている。例えば、お遍路さんから倒木などの報告が寄せられると、次に道を歩く人のためにその情報を掲載する。また、地元住民が整備し歩きやすくなった遍路道の紹介なども行う。同会のホームページは、お遍路さん同士、さらには地域とお遍路さんをつなぐツールとなっているのである。宮﨑氏の遍路道への情熱によって生まれた活動は、新たな取り組みを加えながら後進に引き継がれた。歩き遍路の情報が行き交うキーステーションを目指したいという同会の地道な活動は、これからも全国から訪れるお遍路さんの歩みを支え続けるだろう。

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