活動詳細
広島県 尾道市 2018年受賞
因島水軍まつり実行委員会
村上水軍の雄姿を彷彿とさせる祭りを島を挙げて開催
代表:巻幡 伸一 氏
2018年10月更新
瀬戸内海西部の芸予諸島に位置し瀬戸内航路の要衝である因島は、南北朝時代から戦国時代に活躍した村上水軍の本拠地として知られている。水軍ゆかりの史跡が数多く残されているこの島で、水軍にちなんだ祭りが毎年開催されている。
村上水軍に関する記録は少なく、その実像は不明な点も多い。そうした中で1974年、島の住民が中心となって古文書をもとに村上水軍の陣太鼓を再現し披露した。1980年には、青年会議所の主催により「ちびっこ水軍まつり」が開催され、陣太鼓の体験教室などが行われた。
当時の因島は中心産業であった造船業が不況に見舞われており、それにかわる地域振興の核になるものが模索されていた。そうした中、地域の誇りである村上水軍の歴史を活かしたイベントの開催が官民の間で検討された。1991年に国の「ふるさと創生事業」の基金を活用し、水軍の甲冑と木造の伝令船である「小早」を復元。同年、第1回「因島水軍まつり」を開催し、祭りでは太鼓のリズムに合わせて小早舟をこぎ速さを競う、水軍さながらのレースを行った。その後も島の歴史を彷彿とさせるイベントを考案し、1993年には島、海、火をテーマとする3部構成の祭りのスタイルが定着した。
初夏に行われるオープニングイベント「島まつり」では、島内各地域の公民館や神社を「城」と定め、全町内会が参加して甲冑を着た武者たちの出陣式を行う。続いて8月に開催される「海まつり」では、小早舟のレースを行い、小学生、中学生、男性、女性の部門ごとに勝敗を競う。フィナーレである「火まつり」では、任務を終えた水軍の帰還を再現。水軍太鼓の演奏や水軍の勝利・帰還を祝ったとされる踊り「跳楽舞」のコンテストを行う。そして松明を持った武者が舟で帰還すると、松明と花火で海辺が彩られ美しい情景が広がる。現在では3つの祭りを通じて、約6万人が訪れるイベントとなっている。
これらの祭りには島のすべての町内会が参加し、官民一体となってイベントを支えている。2006年に因島市が尾道市と合併した後は、島外の学校からの参加者も増えた。さらに2012年には、「全国水軍まつり」を開催し、毛利水軍(山口県萩市)や熊野水軍(和歌山県新宮市)、松浦水軍(長崎県松浦市)に扮したそれぞれの地域の人々が因島に集って武者行列を行うなど、同様の歴史を持つ地域間の交流にもつながっている。
「因島水軍まつり」は、海上の秩序を維持した村上水軍の歴史と、それに対する誇りや人の和の大切さを改めて実感することのできる、貴重な機会となっている。