活動詳細
佐賀県 鹿島市 2017年受賞
鹿島ガタリンピック
笑顔と元気が広がるユニークな干潟スポーツの祭典を市民手づくりで開催
代表:坂本鉄也氏
2017年10月更新
干満の差が日本一大きい有明海では、干潮時に広大な干潟が姿を現す。その中でも鹿島市七浦地区の干潟は、約9万年前の阿蘇山大噴火によって堆積した土砂が長い年月をかけて変化し、粒子の細かいクリーミーな泥に覆われている。この干潟で、毎年、大勢の参加者が泥んこになって競いあうユニークな競技大会がある。それが「鹿島ガタリンピック」だ。
「ガタリンピック」とは〝干潟のオリンピック〟という意味である。1984年、鹿島市全域の地域活性化を目指し、市内8団体の青年たちが大同団結して「フォーラム鹿島」を結成した。その翌年、鹿島市が七浦地区に建設した海浜スポーツセンターのこけら落としイベントを委託され、侃々諤々の飲み会の中でこのアイディアとネーミングが決まった。有明海の名物ムツゴロウ漁に使う板に乗って速さを競う「ガタスキー」、ブレーキを外した自転車で干潟に渡した細い板の上を疾走する「ガタチャリ」、ロープに掴まり、できるだけ遠くにダイブする「ガターザン」などのユニークな競技を、子ども時代に干潟で遊んだ思い出をもとに次々と考案。「フォーラム鹿島」のメンバーが体を張って安全性を確認し、ルールを決め、道具を集め、競技場を設営した。
七浦の干潟の泥は肌理(きめ)が細かく、ガタリンピックが開催される季節にはほんのり温かい。全身泥に浸かると地球に抱かれているような癒しの快感があるそうで、競技に参加する人は皆笑顔になる。泥まみれの姿は見る人の笑顔も誘い、参加して楽しく見て楽しいイベントとして、近年は2000人ほどの参加者募集がすぐにいっぱいになり、約3万人の観客が押し寄せる大イベントになっている。干潟の魅力をもっと多くの人に知ってもうために、1993年からは修学旅行生のためのミニ・ガタリンピックを始め、毎年、日本全国から1万人近くが訪れている。
さらに、オリンピックには外国人選手は不可欠と考え、第2回から佐賀県内の留学生を招待している。協力しているのは鹿島高校の生徒と、ホームステイを受け入れる市内の各家庭。1992年からは釜山外国語大学の学生30~40人が毎年参加し、ボランティアで開催事務局の手伝いもしている。これまでにガタリンピックのために鹿島を訪れた外国人は、延べ6000人に迫っている。
フォーラム鹿島では当初、ガタリンピックを全国、できれば世界にも広げ、各地の干潟で開催することを夢見ていた。しかし、どんなに転んでも痛くない、気持ちがいいほどの柔らかな干潟は非常に稀有であることを知って断念した。つまり、ガタリンピックはこの地域だからこそ生まれ、開催が可能な、唯一無二のものであることを再認識したのである。有明海の干潟とともに、人々に笑顔と元気を届けるガタリンピックは、地域の宝としてこれからも大切に守り、育てられていくことだろう。