活動詳細
山形県 上山市 2016年受賞
上山市民俗行事加勢鳥保存会
コミュニティの核となる小正月の民俗行事を復活・継承
代表:大沢健一 氏
2016年10月更新
「カッカッカーのカッカッカー」という掛け声とともに、「ケンダイ」と呼ばれる蓑のようなものを、頭からすっぽり覆った異様な風体の集団が街を練り歩く。真冬の上山市内にはあちこちに雪が積もっているが、手足はむきだしの素肌である。沿道に集まった人々は、そんな彼らに水を浴びせかける。そして、「銭さし籠」と呼ばれる籠にご祝儀を入れ、火除けのお札をもらう。小正月の伝統行事「加勢鳥」のひとこまである。
加勢鳥は五穀豊穣、家運隆盛をもたらす歳神様の来訪行事で、同じルーツを持つ行事が全国に伝わっている。上山では今から400年ほど前、登城を許されて殿様の前で行う「御前加勢」と、周辺の村々から集まった若者が城下町の街角で行う「町方加勢」が始まった。町方加勢では若者たちが商家を巡り、町衆は火伏せと商売繁盛を祈願して彼らに水をかけ、食事や酒を振舞った。しかしこの行事は、明治期には姿を消してしまった。
1954年、周辺町村を次々に合併して新しい上山市が誕生した。城下町だった旧上山と周辺の町村が結束するためには、コミュニティの核となるものが必要と考えた人々は、1959年、加勢鳥を復活させた。しかし、中心メンバーの誰も加勢鳥を実際には見たことがないため、古老や郷土史家の話を聞きながらの手探りの取り組みだった。
1986年、加勢鳥を今後も長く継承していくために「上山市民俗行事加勢鳥保存会」が結成された。保存会では、秋田の劇団「わらび座」に依頼して、地元に古くから伝わる加勢鳥の歌に踊りをつけてもらい、お囃子を担当する「火勢太鼓」のメンバーを新たに募集した。1990年から20年をかけて、加勢鳥が回らない郊外地域の全1万2千戸を訪ねる「事前加勢」を実施し、周知にも努めた。さらに、インターネットを用いた公募を始め、現在は外国人も含め、全国から集まった34羽の加勢鳥が街を練り歩いている。
現代に復活した加勢鳥は資料から想像して作られたものであり、新たな改良も加えられている。いわば、伝統の再創造である。だから厳密な意味での文化財ではない。再生された加勢鳥は、商店や旅館、一般の人々からのご祝儀や、加勢鳥にちなんだご当地グルメや加勢鳥グッズを販売し売上金の一部を寄付する「カッカッカーの加勢鳥応援隊」などによって経済的に支えられている。当日は町の人々がボランティアでお手伝いをし、その協力の輪も広がっている。また、他地域の人に加勢鳥の話をすると非常に関心を持ってもらえるので、上山出身者がふるさとを強く意識するツールにもなっている。加勢鳥はコミュニティを結びつける、地域の大切な文化的財産なのである。