活動詳細
高知県 黒潮町 2016年受賞
砂浜美術館
砂浜を「美術館」に見立て地域資源を「作品」として展示
代表:村上健太郎 氏
2016年10月更新
高知県西部、清流で名高い四万十川に近い黒潮町には、太平洋に面した4kmも続く美しい白砂の浜がある。ウミガメが産卵に上陸し、沖合はホエールウォッチングの名所という自然のままの砂浜、その浜に沿って続く美しい松原とラッキョウ畑。地元の誰もが子どものころから親しんできたこの風景をそのまま美術館に見立てたのが「砂浜美術館」である。
「私たちの町には美術館がありません。美しい砂浜が美術館です」。このコンセプトの通り、上陸するカメ、浜を歩く小鳥などの足跡、さまざまな漂流物、走り回る子どもたち、こうした日常にある事象の中に面白さを発見し、展示作品にしている。この活動は、1989年、写真家・北出博基氏の「自分のとった写真をTシャツにプリントし砂浜で展示したい」というアイデアから、町の職員たちとデザイナーの梅原真氏が、将来の町のありかたを考え、今後も大切にすべきものは何かを議論する中でスタート。以来28年、多くの町民が「すなび」と親しみをこめて呼ぶ活動になっている。
「Tシャツアート展」から始まった美術館の活動は、「漂流物展」「潮風のキルト展」「シーサイドはだしマラソン」「砂の彫刻」など、年間を通して様々に開催されている。毎年の「Tシャツアート展」には、多くの観光客(2016年5月1日〜6日は28,100人)が押し寄せる。町の人たちは売店を出したり、ボランティアで運営を手伝い、郵便局も砂浜にポストを立てて参加している。「すなび」の行事でみんなが元気になり、まちの元気の象徴にもなっている。2003年「NPO砂浜美術館」となり、現在常勤スタッフは17人、砂浜に隣接した公園の指定管理なども受託し、町の文化、観光、産業、教育の一端を担うまでになっている。
2009年、「Tシャツアート展」は海外に渡る。美術館メンバーの「モンゴルの草原でひらひらさせたい」というアイデアが「草原美術館」として実現した。他にも国内外からたくさんの問い合わせがあり、「Tシャツアート展」開催のノウハウ、コンセプトを伝えるための「ひらひらフレンドシップ」を設けて対応。モンゴル、ハワイ、アフリカのガーナ、ケニア、国内では宮城県気仙沼市から長崎県野母崎町までの全国6箇所で開催されている。
砂浜美術館の遊び心に満ちた、自分たちの町を好きに楽しもうという活動に惹かれて、全国から多くの若者たちがボランティアとして参加し、そのまま移住して運営メンバーの中核になっているスタッフもいる。楽しみながら「地元の資源を活用した地域づくりを実現しよう」という「砂浜美術館」の発想、考え方は、次の世代に引き継がれ、さらには地域、国の枠を越えて広がっている。