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サントリー地域文化賞

活動詳細

東北

青森県 田舎館村 2015年受賞

田舎館村 田んぼアート
稲で大地に壮大な絵を描く“田んぼアート”発祥の地

代表:鈴木孝雄 氏

2015年10月更新

活動紹介動画(01:50)
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2015年の田んぼアート

 青森県で最も面積の小さな自治体、田舎館村。人口わずか8000人のこの村に、毎年夏になると29万もの人が訪れる。彼らのお目当ては田んぼをキャンバスに見立てた「田んぼアート」だ。22年前にこの地で誕生し、そのスケールの大きさと緻密さが人々を魅了する「田んぼアート」は、いまや青森を代表する夏の風物詩となっている。

 田舎館村は青森県中央部、平川と浅瀬石川の合流地点に位置し、古くは弥生時代から稲作が行われてきた。豊富なミネラルを含んだ土壌に恵まれ、一反あたり米収穫量日本一に何度も輝いてきた村にとって米は宝。この大切な米をアピールしようと1993年ひとりの村役場職員が発案し、古代米の稲で「稲文化のむら いなかだて」という文字と地元津軽の象徴、岩木山を描いたのがはじまりである。10年目を迎えた2002年、NHK BSプレミアム「千人の力」の依頼を受け、地域住民1000人で田植えを実施。これを機に田植えが住民参加型の恒例イベントとなり、毎年田舎館の人たちの力を結集し作品がつくられるようになった。

 「田んぼアート」の一年は稲刈り後の10月から始まる。役場・農協・商工会メンバーからなる「田舎館村むらおこし推進協議会」のメンバーがその年の絵柄を決定すると、育苗農家の佐々木光治氏が7色11種の苗を育て、特別支援学校美術教師の山本篤氏が黄・紫・緑・赤・白・橙・濃い緑の7色で絵おこしを行う。トマト農家の工藤浩司氏が設計図を作成し、それをもとに村役場職員が総出で測量作業を行い、絵の輪郭を縁取る。こうしてぬり絵状態となった田んぼに彩りを加えるべく、肥後ゑ子氏を中心とした20人の米農家指導のもと、7色11種の稲を絵の具代わりに老若男女1800人が田植えを行う。

 完成した「田んぼアート」を目の前にした人々は、見た者にしか味わえないその迫力とクオリティの高さに驚き、感動を覚える。波打つ稲が何かを語りかけてくるような感覚を受け、涙を流す者も多い。田んぼなのにアート、この不思議な光景は口コミやインターネットでも評判を呼び、来場者数は右肩上がり。「田んぼアート」を行う自治体、団体も日本全国および韓国・台湾など100ヶ所以上となった。

 発祥の地としてのプライドを胸に、外部のプロの手は一切借りず遠近法や測量技術を取り入れ、進化をつづけてきた22年間。しかし彼らはその完成度に満足したことはない。地域住民たちの積極的な姿勢と飽くなき向上心で、これからも田舎館村は田んぼアート界のトップランナーとして走り続けるだろう。

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