活動詳細
福岡県 八女市 2014年受賞
八女福島 住まう文化のまちづくり
独自のファンドシステムで町家を保存・再生し、暮らしの中で活用
代表:北島 力 氏
2014年9月更新
八女市は福岡県南部、福岡市から南へ約50Kmに位置し、江戸時代には久留米藩の物資集積地として栄えた。中心地である福島地区は城下町の特徴を残した商人の町であり、お茶や和紙などの産物が市などで取引され、提灯、仏壇を製造する手工業も発展した。そんな伝統産業が息づくまちは今、“町並み保存”の先進地として注目を集めている。
1991年、大型台風の被害を受け、空き家になっていた町家の内一棟が取り壊された。この光景を目の当たりにした住民有志たちが、貴重な文化遺産を一軒でも多く残す方法はないかと勉強会を重ね、1993年に「八女・本町筋を愛する会」、1994年に「八女ふるさと塾」を結成、町家の保存活動やまちづくりに乗り出した。また、住民の動きを受け、市は町家の修理等を支援するため、1993年、街なみ環境整備事業を導入。1996年からは国の重要伝統的建造物群保存地区選定への準備を進め、同地区の住民や八女市民の合意を得、2002年に選定を受けた。
このように町並み保存の気運が高まり、官民協力体制も整っていく中、新たなステップとして空き家再生・活用を目指した動きが始まる。建築士、工務店、大工や左官などの職人が技術の向上と研究、継承のために結成した「NPO法人八女町並みデザイン研究会」(2000年)、市の職員有志が集まり空き家再生・活用を専門的に行う「NPO法人八女町家再生応援団」(2003年)が中心となって展開する「八女文化遺産再生プロジェクト」が2003年に始動。同プロジェクトでは、福島地区すべての町家の状態と住まいの歴史を調査し、再生すべき空き町家の所有者と交渉。長期の管理委託契約を結んだ上で修復を行う。改修費は独自の社会貢献型のファンドシステムで市民有志から無利子の出資を募り、移住希望者に町家を斡旋し、家賃で返済する。さらに、「NPO法人八女文化振興機構」(2003年)、「八女福島白壁ギャラリー企画室」(2009年)が八女文化遺産再生プロジェクトと協働で、入居者も巻き込みながら、町家を会場に文化的なイベントを展開。重要文化財である八女福島の燈籠人形(からくり人形)の発信や伝統工芸をはじめ八女の手仕事体験を企画するなど、魅力あるまちづくりへと繋げている。
観光のためではなく、そこに住まう“人”を中心に据えた町並み保存活動を行った結果、福島地区への移住者は、現在35世帯。このまちに魅了され入居を希望する人が後を絶たない。このまちの虜となった映画会社・プロデューサーの発案により、ドキュメンタリー映画も製作された。白壁が並ぶこの静かな地に多くの人が惹きつけられるのは、住まう家を大切にする文化が地域に定着している故であろう。