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サントリー地域文化賞

活動詳細

中部

静岡県 浜松市・長野県 飯田市 2014年受賞

峠の国盗り綱引き合戦
県境で接する二つのまちが、境界線を賭けて綱引き合戦を展開

代表:山本 功 氏・山崎 久孝 氏

2014年9月更新

活動紹介動画(1:48)
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写真
綱引き

 山並みが続く静岡と長野の県境、標高1165mの兵越(ひょうごし)峠の一画で、毎年10月に、戦国期をほうふつとさせる「領土」をかけた綱引きイベントが行われている。遠州軍は静岡県浜松市天竜区水窪(みさくぼ)町、信州軍は長野県飯田市南信濃から、地元の商工会青年部の強者10人ずつが対戦する。
 浜松市の最北端「旧水窪町」と長野県の最南端「旧南信濃村」とは、峠を隔てて隣接する。古くは遠州と信州を結ぶ街道の宿場町として栄え、人と物の交流も盛んだったが、近年、自動車が普及し道路網が整備されるにつれ、両町は近くて遠い存在になっていた。そんな時代背景の中、両商工会の青年部は、同じ山間の地域住民同士、かつての交流を取り戻そうと試行錯誤していたが、「個性的な企画で地域を活性化させよう」と、1987年「国盗り綱引き」を始めた。当初は観光客もなく、勝敗は二の次、兵越峠付近の道路で藤づるのロープを使用して実施していた。その後、峠付近の雑木林を伐採し、500坪程度の平地を作りベンチなども設置。藤づるは切れやすいので、綱引き用のロープを使用するようになった。ルールは3本勝負で先に2勝したほうが勝ち。勝った方が相手側に1m領土を拡げるというもの。昨年までの戦績は、遠州軍の12勝、信州軍の15勝で、国境を示す立て札は3m静岡側に寄って立っている。「長野に海を」「静岡に諏訪湖を」が両軍の合言葉である。
 例年、合戦前には、両市長が陣羽織姿で大将口上を述べて火花を散らし、三河・遠州・南信州の3地域連携を推進する豊橋市長が行司役を務めるなど、行政も巻き込んだ盛り上がりを見せている。また子どもの部、見物客が参加できる一般の部があり、会場には、両商工会の女性部がバザーや地元の物産店を出店する。
 5月くらいからルール決めの会議を両町で実施。引き手の構成から服装、靴のタイプまで様々な取り決めを行っている。最近では、女性の参加が義務付けられている。回を追うごとに練習にも力が入り、遠州軍は天竜区役所の職員を相手に、信州軍はブルドーザーを相手に特訓を重ねている。
 「領土」をかけた大人の遊びに真剣に取り組むことで、地域住民と行政も巻き込んで、ライバルでもあり仲間でもある二つのまちの交流が復活した。

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