活動詳細
沖縄県 うるま市 2010年受賞
現代版組踊「肝高の阿麻和利」
教育で地域をおこす、中・高校生の創作舞台
代表:長谷川 清博 氏
2010年8月更新
世界遺産に登録されている勝連城の最後の城主・阿麻和利を主人公に、2000年、沖縄の伝統芸能をふんだんに取り入れた「現代版組踊『肝高の阿麻和利』」が上演された。「組踊」とは、歌とセリフ、舞踊が組み合わさった沖縄伝統の歌舞劇である。発案したのは、「子どもたちに居場所と感動を与えたい」という当時の教育長。出演者は地元の中学・高校に通う子どもたち160人余りである。当初、1回限りの公演の予定であったが、「続けたい」という子どもたちの強い希望がかない再演が決まった。以後10年の間に、沖縄だけでなく、福岡・東京・盛岡・ハワイなど国内外で170回以上の公演を行い、10万人を超える観客を動員している。
琉球王朝の正史では逆賊とされてきた阿麻和利の歴史を読み直し、地域と平和を愛する故郷の英雄として蘇らせたこの舞台は、子どもたちに大きな感動を与え、そこから、やる気と郷土愛と自信が芽生えた。週2回、夕方6時から9時までの練習は、役者チームのほか、沖縄の伝統的な舞踊やエイサー、棒術、舞台での生演奏を担当する「きむたかバンド」などのパートごとに、高校生のキッズ・ リーダーズが指導する。やる気いっぱいの子どもたちの集中力、吸収力は目を瞠るものがあり、中・高生の舞台とはいえ非常に完成度が高い。また彼らは練習と公演活動以外にも、小学生以下の子どもたちへのワークショップや、勝連城の保全と美化のためのボランティア活動、地元のイベントへの出演など、地域のために自分たちができることに自発的に取り組んでいる。「肝高」とは、志が高い、気高いという意味の古語で、かつての勝連城や勝連の美称であった。今、「肝高の阿麻和利」に出演する子どもたちは、「肝高の子ら」と呼ばれ、それに応えている。
2001年から、「肝高の阿麻和利」の主催者は、教育委員会に代わり、子どもたちの父兄や会の主旨に賛同する者で結成した「あまわり浪漫の会」に移った。チケット販売、衣装や小道具づくりから公演当日の受付や炊き出しまで、専従の事務局とボランティアが担当している。市や教育委員会からの助成はなく、今日まで補助金に頼らない独立採算の公演活動を続けている。
郷土の歴史を題材に、伝統芸能を取り入れた子どもたちによる舞台活動は、「勝連方式」「きむたかメソッド」として、教育関係者や自治体、地域活性化に取り組む人々から、全国的な注目を集めている。すでに「現代版組踊」は浦添市・石垣市・金武町・ 那覇市・大阪狭山市に広がり、合同公演や練習などの相互交流も行われ ている。また、うるま市や漁業組合、地元企業では、阿麻和利のブランドとネットワークを地域経済の活性化に役立てようという動きも始まっている。
感動の力が子どもたちを変え、周囲の大人たちにも影響を与えた。教育から始まった文化活動が大きなうねりとなり、地域おこしにまで発展しようとしている。