活動詳細
三重県 鳥羽市 2010年受賞
島の旅社推進協議会
離島の生活文化でもてなす旅のコーディネーター
代表:山下 伴郎 氏
2010年8月更新
伊勢湾の入り口に浮かぶ鳥羽の4つの島には、漁業など海と関わりの深い生活をしている約4300の人々が暮らしている。それぞれの土地には、豊かな自然に加えて、長い歴史の中で培われてきた食や暮らし、まちの景観がみられるが、ここで生活する人たちにはあたりまえのことで、その独自性は見逃されがちである。答志島にある「島の旅社推進協議会」では、生活に根ざした魅力、楽しさと歴史の深さを、素朴なまなざしで見直して、都会の人々や子どもたちに、日常そのままの海辺の暮らしを体験してもらう「島の旅」をプロデュースしている。
プロデュースするのは、島外から嫁入りした人も含めた4人の「かあちゃん」たち。家業や海女の仕事の合間を縫って、ツアー、イベントを企画し運営している。この活動は2004年にスタートし、子どもたちが無人島にわたり磯体験をする「浮島自然水族館」、迷路のような路地を歩きながら島の味と歴史を楽しむ「路地裏つまみ食いツアー」、ベテラン海女さんが焼いてくれる鮑やイセエビを味わう「海女小屋体験」など、島の人たちとふれあうイベントが人気だ。
また、三重大学などと共同で開催している健康ツアー「ウェルネスの旅」は、風光明媚な自然にいやされながらのウォーキングと、管理栄養士監修の食事つきのツアーだ。4島のひとつ、三島由紀夫の小説「潮騒」の舞台・神島(かみしま)では作品にちなんだツアーが開催されるなど、それぞれの島の特徴を活かした事業も展開されてきている。地元の人々の手づくりイベントには、名古屋、大阪、東京など、県外から多くの参加者があり、その素朴な楽しみが魅力となってリピーターも年々増えている。
ツアーの開催には、漁師や海女さんのほか、島の人たちの協力が欠かせない。海女小屋体験ではベテラン海女さんが焼き番を担当、島の暮らしを体験するプログラムでは、生活の中で受け継いできた知恵や技、そして経験を活かした「ロープ結い」、「干物作り」など島の名人が登場するものもある。「島の旅社推進協議会」にとって、町内会、漁協、旅館組合、老人会のみなさんはツアーやイベントの開催を支える大きな力であり、こういった活動を通じて、たくさんの島の人同士がコミュニケーションをとるからこそ、島独特の文化へのあらたな誇りもうまれてきている。
島外からのお嫁さんたちのための「嫁さんの集い」、「島のよさを考える」勉強会をはじめ、4島の家庭料理を集めた「島・食の文化祭」を開催し、レシピを冊子に纏め上げるなど、次世代に島の魅力を伝える活動も実施してきた。島の元気を自分たちの手でプロデュースする「島の旅社」のメンバーたちの、地域の事を少しでも知りたい、知らせたいという気持ちに根ざした活動は、島の人たちを巻き込みながら、島同士、住民同士のあらたな交流を生んでいる。