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サントリー地域文化賞

活動詳細

九州・沖縄

大分県 豊後高田市 2009年受賞

豊後高田 昭和の町
昭和30年代の生活文化を再現し、中心商店街を活性化

代表:野田 洋二 氏

2009年9月更新

活動紹介動画(1分43秒)
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写真
「昭和の店」が並ぶ商店街

 国東半島への入り口にあたり、海上および陸上交通の要衝であった豊後高田は、古く奈良時代から栄えた町である。駅前にあった町の中心商店街は、国東半島随一の賑やかな通りであった。ところが、モータリゼーションが発達し、昭和40年に鉄道が廃線になると、ご多分にもれず商店街はどんどん寂れていった。約4割が空き店舗になり、通りを犬や猫しか歩いていない「犬猫商店街」と揶揄され、存続そのものが危ぶまれるような事態に陥った。

 祭りや衣食住にわたる地域の生活文化を支え、人々が様々な思い出を共有する商店街をなんとか残したい。この共通の願いから、商店主をはじめとする町の有志、商工会議所、行政が協力して、1992年、「豊後高田市商業まちづくり委員会」を結成した。この町独自の個性を活かし、よその地域の二番煎じではないまちづくりをするために、5年の歳月をかけて調査と議論を続け、試行錯誤を重ねた。その結果、町が最後に輝きを放ち、そのまま時が止まったように町並みだけが残っている、昭和30年代の商店街を再現しようという案がまとまった。さらに3年をかけて、町並みの実態調査や全国100件近い地域への視察など入念な準備を行う。そして2001年、「豊後高田昭和の町」がいよいよスタートした。

 昭和の頃の姿に店舗を改修し(費用の2/3は市などが補助)、「一店一宝」(当時を伝える店のお宝)と「一店一品」(昔から伝わる自慢の商品)を備え、お客さんとのコミュニケーションを大切にする「昭和の店」は、当初9店舗で始まった。その後、駄菓子屋のおもちゃ20万点を収蔵する博物館、昭和の絵本の原画を展示する絵本美術館などが次々にオープン。昔を懐かしむ中高年や、映画やテレビ、漫画を通じ、昭和に憧れを感じる若者たちが数多く訪れるようになった。今では、昭和の店は40店舗近くに増え、商店街は年間30万人以上が訪れる観光地となっている。

 昭和の町づくりは、主人公である商店主とコーディネート役の商工会議所、豊後高田市のバックアップによる絶妙な連携プレーで進められてきた。2005年には、第三セクターの「豊後高田市観光まちづくり株式会社」が設立され、マネージメントの役割を担う。また、昭和30年代の教育の良さを発見・発掘して、現代の教育に活用する「学びの21世紀塾」が行政を中心に進められており、学校と地域社会が協力して子どもたちの教育に取り組んでいる。

 自分たちの商店街を残すことを目的として始まったまちづくりであるため、観光一辺倒で、テーマパークのような町にはなりたくないという思いが人々のあいだにある。そのためには、周辺の農家や製造業者、サラリーマン家庭など、幅広い市民を商店街に呼び戻し、昭和の町に巻き込み、観光と地域住民の生活や産業が一体となって発展していくことが期待される。

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