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サントリー地域文化賞

活動詳細

九州・沖縄

長崎県 雲仙市 2008年受賞

勤労障がい者長崎打楽団 瑞宝太鼓
地域に育まれ、プロとして活動する知的障がい者による太鼓集団

代表:岩本 友広 氏

2008年9月更新

活動紹介動画(1分32秒)
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写真
仙台公演(2005年6月)

 雲仙岳の麓に広がり、眼下に有明海を眺望する長崎県瑞穂町(現・雲仙市)。自然豊かなこの土地に、社会福祉法人「南高愛隣会」が、1987年、日本初の知的障がい者の職業訓練校「長崎能力開発センター」を開校した。身の回りのことを自分でできるように自立し、集団生活・社会生活に適応するための訓練を行う、全寮制の学校である。この学校のクラブ活動の一環として、和太鼓クラブが設立された。

 当時、島原半島一帯では和太鼓のグループが数多く、活発に活動しており、地元の太鼓団体のリーダーもこのクラブを応援し、指導した。体全体を楽器の一部のようにして演奏する和太鼓は、生徒たちを魅了し、熱心な生徒は卒業後もクラブに集まってくるようになった。そして、島原半島の太鼓連盟や地域のイベントに参加し、腕を磨いた。バルセロナやシドニーのパラリンピック、ニューヨークやロスアンゼルス、スウェーデンなど、海外公演も行っている。

 しかし、年間公演回数が50回を越えるようになると、OBたちは仕事との両立が難しくなった。「太鼓を仕事にしたい」という彼らの声を聞いた愛隣会の理事や職員たちは、「彼らの夢をかなえてあげるのが私たちの役目」と、同会の事業部門として「興行課」を設け、彼らを職員として雇用することを決めた。そして、2001年、日本で初めての、世界でもおそらく他に類がない、知的障がい者によるプロの芸能集団が誕生。地元・瑞穂町の宝になってほしいという願いを込めて、「瑞宝太鼓」と名づけられた。

 メンバーたちの出身地は九州一円に散らばっているが、10代で親元を離れて以来、学び、働き、暮らしてきた瑞穂町、雲仙市は第二の故郷である。地元の幼稚園児たちに太鼓を教えたり、地域活性化やPRのためのイベントにも積極的に参加しており、地元の人々や行政も彼らをあたたかく支援している。

 また、瑞宝太鼓のメンバーは、同じように障がいを持つ後輩たちへの太鼓指導にも取り組んでおり、2006年には後輩2名が新たにメンバーに加わった。雲仙市・諫早市・長崎市の3箇所で指導を受ける100名近い若者たちにとって、彼らは憧れの存在であり、努力目標となっている。

 年間の公演回数は80〜130回、観客動員数は4万人を越える。近年は全国の刑務所・少年院でのボランティア公演にも力を入れている。彼らのひたむきな努力と確かな技術、ピュアな演奏姿勢、豊かな表現力は聴衆の感動を呼び、全国にファンを増やしている。「希望し、努力し、感謝して生きる」という彼らのモットー、メッセージは、太鼓の響きに乗って、多くの人々の胸を打ち続けている。

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