活動詳細
富山県 高岡市 2006年受賞
福岡町つくりもんまつり
野菜による見立て細工の祭典
代表:石澤 義文 氏
2006年8月更新
毎年、9月23日、24日の両日、「つくりもんまつり」が福岡町の旧町部市街地で開催される。昨年、高岡市と合併した福岡町は、高岡・富山・金沢に通勤するサラリーマン家庭が大半を占める、普段は静かな普通の街だが、この両日は奇祭とも言われる「つくりもんまつり」のために10万人を超える人出で賑わう。
「つくりもん」とは、野菜を中心に、果物や草木なども用い、地元の風物や時節の話題をテーマにした見立て細工のことである。五穀豊穣に感謝するために300年以上も前に始まった祭りが、地蔵盆のお供えと融合し、独自の発展を遂げた。祭りの期間中、住民手づくりの40点前後の作品が街のあちこちに展示され、人々は時にユーモラスな、時に見事な写実性を持った作品を見て歩く。昭和30年代にコンクール形式を取り入れた頃から、昔から作品を展示していた町内会以外の団体も参加しはじめ、各出展団体が毎年の作品の出来栄えを競い、常に新しい趣向や技術を取り入れるようになった。そのため、3メートルを超える超大作や電飾、機械仕掛けのハイテク作品、野菜本来の味わいを最大限に活かしたアイデア作品などバラエティー豊かで、歴史はあるが伝統の堅苦しさには縛られない、創造力に溢れた民衆芸術の祭典となっている。
作品づくりは町内会や婦人会、地元企業などの地域団体単位で行われる。完成までに普通の作品で約1週間、大作になると1カ月近くを要する。使われる野菜類の量も半端ではない。祭りが近づくと近隣のスーパーや農家、農協への買出しに奔走し、変わった品種、いびつな野菜は家庭菜園で育てるという熱の入れ方である。制作は毎晩、勤めや家事を終えた人々が作業場所に集まって、和気藹々と進められる。親と一緒に子どもたちもやってきて豆貼りなどの「お手伝い」をする。豆にも裏表や上下があり、熟練するまでに「豆貼り3年」と言われる。生ものを扱っているために、祭り直前の二日間が仕上げの山場となり、地域総出で、場合によっては深夜まで制作に励む。ほとんど全戸から一人以上が参加し、それぞれの得意な分野で自然に分業するので、年齢や職業、古くから住んでいる人と最近移り住んで来た人との垣根を越えた地域住民の交流の場となっている。
近年は祭りの一環として、簡単に作れるミニチュアの「つくりもんコンクール」や体験コーナーを設けたり、地元小学校の3年生全員が「つくりもん」制作に取組むなど、後継者の育成や普及にも取組んでいる。新しく「つくりもん」を出展するグループには、「つくりもん名人」がコーチャーとして派遣される。地域の人たちが一丸となって「つくりもん」を作って楽しみ、作品を他所の人に見てもらって楽しみ、さらには他の出品作品を見て楽しむ「つくりもんまつり」は、3度楽しい、誠に地域文化らしい地域文化活動として、今後も一層発展して行くことが期待される。