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サントリー地域文化賞

活動詳細

中部

富山県 富山市 2005年受賞

全日本チンドンコンクール
50年以上続くコンクールがチンドン文化の保存と振興に寄与

代表:森 雅志 氏

2005年8月更新

活動紹介動画(1分52秒)
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写真
全国のチンドンマンが街を練り歩く

 チンチンドンドン、チン、ドンドン--鐘や太鼓、管楽器の賑やかな楽の音と面白おかしい口上、観客の間からどっと沸きあがる笑い声。これは、半世紀以上にわたり富山で開催されている極めてユニークな催し、「全日本チンドンコンクール」の一コマである。

 コンクールが始まったのは1955年。空襲で焦土と化した富山市に復興の兆しが見え始めたこの頃、市民に明るい笑いを提供して元気づけ、商店街の活性化にも役立てようと、市と商工会議所が主催する「桜まつり」のメイン・イベントとして企画された。第1回には、全国からチンドンマン約150人が結集し、広場や沿道を埋めた観客の数は20万人に上った。

 コンクールは3人1組で行われ、勝ち抜き選で日本一の座を競う。全国のプロのチンドンマンたちが、毎年、この日のために工夫を凝らし、衣装も新調して、新ネタの研鑽に励むという。優勝者は高い評価と名誉を獲得し、全国さらには海外からも公演に招かれる。磨き上げられた芸を誇るチンドンが、日本独特のパフォーマンス・アートとして海外でも非常に人気があるというのも当然である。

 長い歴史の中で、このコンクールは時代に応じて様々な進化を遂げている。テレビ全盛期の1960年代以降、チンドンの仕事が減り、後継者不足と高齢化が深刻な問題となった。1972年以降、出場者が減少の一途を辿り、一時はコンクールの開催も危ぶまれた。しかし、「やめないで」という市民の声に支えられ、コンクールを継続しているうちにチンドンの魅力が見直されはじめた。90年代になると、素人チンドンからプロの世界に飛び込んでいった若手が出場しはじめ、コンクールは再び活気を取り戻した。

 こうした流れを受けて、富山市は1997年にチンドンマン育成講座を開設。98年に始まった素人チンドンコンクールには、現在では県外を含めて20組が参加し、後にプロに転向するグループもある。2004年には、県内在住のアマチュア40人が「チンドン・オーケストラ」を結成し、活動を開始するなど、地域にチンドンの文化が広がっている。

 毎年、「全日本チンドンコンクール」は、4月の桜の時期に3日間にわたって開催される。市内中心部数ヵ所の特設ステージでのパフォーマンス、大通りやアーケード通りでのチンドン・パレード、夜桜会場や繁華街での流しチンドン、公民館や福祉施設、学校への出前など、街じゅうにチンドンが響き渡る。50年を超える歴史の中で、コンクールは、富山に春を呼ぶ地域の祭り、季節の風物詩として市民に定着した。さらに、同業者同士が交流し、互いに芸を研鑽しあい、日本一の座を目指すこのコンクールのお陰で、富山は今や、全国のチンドンマンにとって第二の故郷であり、伝統的な芸を継承し、チンドンの発展を支える聖地ともなっているのである。

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