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サントリー地域文化賞

活動詳細

関東

東京都 武蔵野市 2004年受賞

武蔵野中央公園 紙飛行機を飛ばす会連合会
広大な原っぱのある公園に愛好家が集い、紙飛行機を通じたコミュニティを形成

代表:二宮 康明 氏

2005年2月更新

活動紹介動画(01:50)
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写真
青空に舞う紙飛行機

 太平洋戦争当時、零式戦闘機などのエンジン工場があった土地が戦後アメリカ軍に接収されたが、1973年に返還され、1978年頃からその広大な原っぱに紙飛行機を飛ばす愛好家が集まり始めた。その後、愛好家らを含めた武蔵野市民の強い要請を受けて、1989年に全国にも例のない敷地(約10万平米)の殆どが原っぱのままの東京都立武蔵野中央公園として復活することになった。

 今日では、休日を中心に大勢の市民の憩いの場となり、自作の紙飛行機を飛ばす人々で賑わうなど、都会には極めて貴重な原っぱ主体の公園として広く知られるようになった。時にはわざわざ他県から遠征してくる人もあり、お互いに紙飛行機の設計図を交換したり、情報を共有化するなど、見知らぬ者同士が紙飛行機という共通の趣味を通じて友好を暖めている。休日には大小さまざまな飛行時間を競う大会が開かれ、愛好家たちの腕試しの場ともなっている。時には10分以上も飛行し続けることがあり、公園に遊びに来た人達から歓声があがる。また、子供や家族向けに紙飛行機教室を年に数回開いている。このように小さな子供達から年配の方々まで、老若男女を問わず、紙飛行機を媒介に世代を超えたコミュニケーションの場としてこの活動が果たす意義は大きい。

 現在、武蔵野中央公園で紙飛行機を飛ばしているメンバーは約300名。「飛ばす会」という名称はあるものの、組織に入っていない人も含めて、全く自由な愛好家の集まりとなっている。この武蔵野中央公園のみならず、紙飛行機の愛好家は全国で約10万人。愛好家団体は40とも言われ、年に1回、全日本紙飛行機選手権大会(参加者2000人-3000人)が開催され、今年は11回目の大会として9月に北海道で予定されている。連合会の代表は、日本紙飛行機協会の会長でもある二宮康明氏で子供の頃から紙飛行機に親しみ、数々の紙飛行機の設計を手がける他、「よく飛ぶ紙飛行機集」等の著書、専門誌や子供向け雑誌に論文や寄稿を行って紙飛行機の普及に努めている。また、1967年サンフランシスコで開かれた第1回国際紙飛行機大会で滞空時間と飛行距離の2部門で1位となり、その結果大会のグランプリを受賞したこともある。

 1991年にNHKで放送された新日本探訪「東京紙飛行機ロマン」は、この公園で紙飛行機を飛ばす人々を生き生きと描いた番組で、この中で大久保章氏(元陸軍のベテランパイロットでのち飛行教官)、長屋敦夫氏(闘病中の夫人を通院させる間にこの公園で紙飛行機と出会う)、菅野友統氏(近所に住む心臓を患っていた青年で何度も大会で優勝した)の3名が紹介された。同番組は昨年と今年、NHKアーカイブスとして久方ぶりに再放送され、「番組で飛ばしていた紙飛行機を子供達に紹介したい」「菅野さんの姿を見て、勇気づけられた」などの反響が全国から寄せられた。

 3名の方々はいずれも現在では故人となられているが、戦争という悲しい歴史を刻み、かつて爆撃機が飛び交った空に、現在は平和を象徴するかのように、紙飛行機が大空高く飛び続けている。

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