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サントリー地域文化賞

活動詳細

四国

高知県 香南市 2000年受賞

土佐絵金歌舞伎伝承会
地元に伝わる絵金の屏風絵に描かれた歌舞伎の演目を住民が演じる

代表:杉村 信夫 氏

2000年5月更新

活動紹介動画(02:00)
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写真
土佐絵金歌舞伎伝承会

 1999年11月17日の宵、リヨン市のモリエール劇場は拍手の嵐に沸き立った。リヨンはパリから南へ400キロ、フランス第二の都市であり、第23回ジャパンウィークの開催地である。初めて海をこえ舞台に立った「土佐絵金歌舞伎」の役者、裏方全員は鳴り止まぬ拍手のなか、深い感動と達成感にしばし浸っていた。

 この壮挙は1993年5月、高知県香美郡赤岡町に「土佐絵金歌舞伎伝承会」が結成されたことに端を発する。例年7月の夏祭りには、同町が保存する絵金の芝居絵屏風を商店の軒下に飾る「絵金祭り」が開催される。同町の横矢登志さん等が、芝居絵屏風に描かれた歌舞伎の演目を町の人間で演じてみたいと提案し、それを受けた商工会会長の杉村信夫氏、登志さんの孫嫁横矢佐代さん等が働きかけて、町の有志が伝承会を結成した。

 絵金とは江戸末期、高知城下に生まれた画家金蔵の通称である。狩野派の画風を学び、家老のお抱え絵師として活躍するが、事情あって狩野派を破門され、城下追放の身となる。上方芝居の書割や看板絵を描き、時には端役で舞台に出るなど放浪の後、住みついた赤岡で芝居絵に開眼する。当時の赤岡は交易の拠点として高知と並び商業がおおいに栄えた。現在、高知県に残る絵金の芝居絵屏風30双のうち23双が同町に保存されている。

 町の若者も加わり5月に伝承会がスタートする。演目を「二月堂良弁杉」と決めたものの、全員芝居は未経験。ビデオを参考に研究を始める。高知市内在住で娘歌舞伎の経験者中村和子氏、同じく高知市無形文化財の竹本一長太夫から手ほどきを受ける。大道具等はビデオを参考に町の疂屋さん達が引き受けた。7月17日の祭りまで、残された時間は僅か。時に深更に及ぶ懸命の練習を重ねる。いよいよ本番。生憎、早梅雨の集中豪雨、テント張りの特設舞台で貸し衣装を気にしながらの初公演だったが、その大雨に勝る拍手をもらい、全員「やれば出来る!」の自信をもつ。

 1997年、文化庁の「文化のみえる町づくり事業」の指定を受け、2年にわたり助成を受けたのを期に、東京からプロの歌舞伎役者を招き演技指導を受ける。また機会を見つけて京都南座や琴平の舞台を観るなど研鑚を積む。

 伝承会の地元での活躍の場は、「絵金祭り」の二夜と、赤岡の浜で5月に行われる「どろめ祭り」(酒の早のみ大会)でのパフォーマンスであり、町の人々の大きな楽しみとなっている。呼ばれれば、県外にも出かけて公演し、他座との交流もおこなっている。絵金芝居を通して、地域の人々の間に新たな交流が生まれ、町の文化、歴史への関心も広がりつつある。

 今年の夏で8回目の公演となるが、習得演目は11に達した。舞台に立つのは子役以外は男性のみで、現役の女形である杉村会長を除いて20〜30歳代の若者である。今後の夢は、子どもだけで演じる子ども歌舞伎を実現し、町の誇りである絵金と自分達が創造した文化活動を次世代に継承していくことである。

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