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サントリー地域文化賞

活動詳細

東北

山形県 鶴岡市 1998年受賞

山口 吉彦氏・山口 考子氏(個人)
私設アマゾン資料館を核に「庄内国際青年祭」など草の根国際交流活動を展開

1999年11月更新

写真
セネカルのパーカッショニストと
山口夫妻

 美人と米で知られる庄内地方は、文化豊かな土地柄である。近年はハイテク産業の成長に加えて、国際活動とアマゾンの魅力が付加された。

 その伝道者が山口夫妻である。山口吉彦氏は鶴岡市に生をうけた「昆虫少年」。大自然の素晴らしさに魅せられ、アマゾンへの夢をいだく。東京農大を経てフランスのボルドー大学、リヨン大学に留学、氏の関心は農業から文化人類学へと広がる。1967年頃からフィールドワークを開始、アジア、アフリカなど85ヵ国を回り、念願のアマゾンに。日本人学校の教師として71年から3年間ペルーに滞在し調査活動に励む。75年、考子氏と結婚。以後夫唱婦随、婦唱夫随の活動となる。翌76年、考子氏がベレンの日本人学校で教鞭をとり、吉彦氏のフィールドワークを支える。通算十数年に及ぶアマゾン滞在で、収集した資料は3万点以上。言語も習慣も部族により異なるアマゾン奥地での調査・収集。これは難事業である。「カヌーをチャーターして目的地にはいるんです。猛獣の声にテントで心細い夜を過ごしたこともあります。インディオの人と一緒に暮らしました。同じ物を飲み食いできれば、仲良くなれます。自然と共生するやさしく賢いひとたちです」と、ご夫妻にかかれば苦労話も明るくなる。

 82年、鶴岡市の自宅に「アマゾン資料館」を開設、そこを拠点に国際交流活動を始める。まず「庄内国際青年祭」。日本に来ている外国人留学生を庄内に招待し、地元の若者との交流、ホームステイを通じて互いに理解しあう。庄内を舞台にしたフィールドワークの実践である。登山、茶道、花火…。共に遊び、学ぶ1週間。1市2町からスタートし、現在は庄内14市町村全てが受け入れ、協力している。この15年間に受け入れた留学生は2300名以上。多くの家庭が外国人との生活を体験した。87年、国際交流の支援組織「庄内国際交流協会」発足。若者を中心としたボランティアメンバーは88名から今や800名に増加。山口夫妻を中核とする同協会は、「庄内国際青年祭」以外にも幅広い活動を展開している。例えば、タイの恵まれない子ども達の施設「子どもの村学園」に庄内の中高生を派遣、親善と交流を体験させている。この10年間で300名がタイを訪れた。

 その他、アフリカ難民への衣類送付、外国人の為の日本語教育等、活動は多岐にわたる。91年、鶴岡市朝日村の村おこし事業に協力、氏の生物標本を中心とする「アマゾン自然館」開設。94年、草の根の国際交流をより活発化すべく、鶴岡市が「出羽庄内国際村」を開設。同施設には「国際交流センター」と氏のアマゾンを中心とした民族資料を収蔵・展示する「アマゾン民族資料館」を併設している。

 山口夫妻が播いた一粒の種は、今、世界と庄内を結ぶ交流の花と咲きつつある。

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