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サントリー地域文化賞

活動詳細

近畿

兵庫県 南あわじ市1997年受賞

淡路人形協会 淡路人形座
伝統ある淡路人形浄瑠璃を無休で公演し、地域に根差しつつ活発な海外公演も

代表:馬詰 優 氏

2022年4月更新

活動紹介動画(02:01)
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写真
「伽羅先代萩」公演風景

 鳴門の渦潮を遙かにのぞむ好所に淡路人形浄瑠璃館はある。こぢんまりとした小屋に一歩足を踏み入れると、そこには懐かしい太棹の響きと渋い語り、生命を吹き込まれた人形の所作、時代をこえた人情の世界が繰り広げられている。

 文楽の祖型である淡路人形浄瑠璃の歴史は500年をこえる。最盛期の江戸前期には44座が全国を巡業し人気を競った。淡路は豊かな芸の島であった。が、明治以降、とりわけ戦後は映画やテレビ等に押されて衰微の一途を辿り、廃絶の危機に瀕していた。これを惜しむ地元商工会が中心となり、1964年、三原町に淡路人形座を設立、4年後に南淡町福良の観潮船乗り場の2階に移り、翌年全島挙げての後援団体淡路人形協会が発足。76年に国の重要無形民俗文化財に指定され、85年、現在の淡路人形浄瑠璃館に移転した。

 同座のメンバーは事務方4名を含めて18名。年中無休で一日8公演。お客さま一人でも上演するというから文字通り大車輪の活躍である。持ち外題は20で定番は「傾城阿波鳴門」。98年に義太夫節三味線の人間国宝となった「お師匠さん」と呼ばれている最年長の鶴澤友路さん(85歳)を別格とすれば、20〜30代の若者が舞台を支えており、40年の歴史の中で、世代交替が上手く進んでいる。

 同座は小屋の外にも活動の輪を広げている。長年にわたり地元の子ども会や小・中・高校の人形芝居クラブに出向き直接指導を行っている。生徒たちは人形の遣い方の指導を受け、畳の間では正座で三味線、語りを教わる。年1度開催される後継者団体発表会には、親も駆けつけて満員の盛況。多くの後継者が育ちつつあり、同館を支えている若者の全員がそうした経験者である。芸の島の伝統は見事に継承され、発展しつつある。

 9年前より、各地の人形芝居の関係団体に呼びかけて、全島挙げて「人形芝居サミット&フェスティバル」を開催している。1996年には39団体が参加し、30年ぶりに野掛けが復活した。99年も43団体が参加。7年間にわたり約1ヵ月ずつ4回、同座で修行したドイツの人形劇団も淡路で習得した“かしら作り”や“人形遣い”の技術を集大成した上田秋成原作の「蛇性の淫」を公演した。巡業時代の名残として各地に淡路系の人形が保存され、或いは活動している団体が100以上あり、人形芝居の中心地としての認知を得つつある。

 また、海外公演も活発であり、ソ連を皮切りに米国、イタリア、スペイン、チェコ、ドイツ、香港等々15回延べ26ヵ国に及び、97年にはフランスのシャルルヴィル=メジェール市で開催された世界人形劇フェスティバルの主役として招待され、同年11月には日米協会創立90周年記念の催しで米国を巡演、98年はマレーシア、オーストラリア公演、99年3月から4月にかけて台湾でも公演し好評を博した。

 衰退の危機に瀕していた淡路人形浄瑠璃の伝統を生き生きと継承し、広く発展させてきた功績は大きい。

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