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サントリー地域文化賞

活動詳細

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富山県 南砺市 1996年受賞

南砺市いなみ国際木彫刻キャンプ実行委員会(受賞時は「いなみ国際木彫刻キャンプ実行委員会」)
木彫りの伝統をいかし、世界の彫刻家を招き町ぐるみで野外イベントを開催

代表:清都 邦夫 氏

1999年11月更新

活動紹介動画(02:00)
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写真
屋外での公開制作

 富山県南西部の砺波平野にある井波町は、真宗大谷派瑞泉寺(1390年建立)の門前町として栄えてきた人口1万千人の町である。瑞泉寺から派生した寺社彫刻の技法が「井波彫刻」として今日まで受け継がれ、現在、井波町を中心に180軒の彫刻工房、約300人の彫刻師が住み、国内唯一最大の木彫刻集団を形成し、欄間、ついたて、山車飾り、置物などの木彫作品を日本全国に供給している。

 伝統を守る一方で芸術創造活動にも挑戦し、毎年多くの作家が日展を始め様々な展覧会に出品しているが、1988年ハンガリーで開催された木彫刻シンポジウムに、井波町から2名の木彫刻作家が参加したことから、国際的な木彫刻イベントを実施しようという機運が生まれた。そして井波町と富山県、富山県芸術文化協会、北日本新聞社他マスコミ各社、井波美術協会、井波彫刻協同組合などで構成される実行委員会が誕生し、1991年に第1回「いなみ国際木彫刻キャンプ」が実施された。以後4年に1回のオリンピック方式で行われ、99年第3回が開催された。

 このキャンプは「木彫りを通して世界をつなぐ」というテーマを掲げ、海外14カ国14名、国内6名、地元2グループ167名、計187名(第3回の実績)の木彫刻作家が参加する大規模なものである。その特徴は、完成された作品をコンクールで競うという形でなく、原木から作品完成までを屋外で公開制作するなかで、各国の民族、伝統、文化に触れる機会が作られ、国際理解と交流が図られている点にある。

 7月下旬からはじまる16日間のキャンプ中、シンポジウムや写生コンクール、写真コンクール、スタンプラリーなど様々に趣向を凝らしたイベントが用意され、また開会式、閉会式には、合唱、マーチングバンド、和太鼓などが各種団体により披露される。ボランティアが積極的な役割を演じているのも特徴で、回を追う毎にボランティアの数も増え、第3回はのべ1200人が参加、通訳、制作設置補助、清掃、広報などに、中学生からお年寄りまで各年代層が裏方として重要な役割を担った。会場内では同時に、PTAが主体となって小学生がトーテムポールを制作したり、中学校の授業で英語パンフレットを作成するなど教育の場も総ぐるみで参加しており、まさに町あげての事業となっている。

 キャンプの実績をもとに海外の木彫刻キャンプに毎年地元作家を派遣しており、現在まで22名を数え、世界的なネットワークも広がりつつある。また完成された作品は会場である閑乗寺公園の他に井波芸術の森公園や大門川河川公園にも移設され、一帯が木彫ゾーンとなった。キャンプ活動はまた伝統的な木彫工芸にも刺激を与えており、工芸品の展示施設である「井波彫刻総合会館」や木彫りの体験工房を備えた「木彫りの里創遊館」も開館、他にも町のあちこちに大きな木彫のモニュメントを据えたり、橋の欄干やバスの標識、表札にも木彫を利用するなど、木彫による町並み景観が整えられつつあり、木彫を核とした町づくりが着々と進められている。

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