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サントリー地域文化賞

活動詳細

北海道

北海道 札幌市 1990年受賞

札幌こどもミュージカル
北海道の自然とアイヌの精神文化に材をとった手づくりの子どもミュージカル上演

代表:細川 眞理子 氏

1999年11月更新

写真
「ポロリンタン」舞台風景
(1989年10月)

 アイヌ ネノ アン アイヌ
(人間は人間らしくありなさい)

 これは、はるか昔から北海道の大自然の中で暮らしてきたアイヌの言葉である。自然や動物、神様を大切に敬い、物語や歌を愛するアイヌ民族には、地域の生活に根ざした豊かな精神文化が息づいている。

 1981年、札幌で活動を続ける主婦のボランティアグループ「りら」は大阪の国立民族学博物館に見学旅行にでかけた。ここで貴重なアイヌ文化に目を開かされた同グループは、地元で独自に勉強会を続け、翌年、近所の子どもたちを集め、アイヌの民話を題材にしたオリジナルのミュージカル「キツネのチャランケ」を上演。グループのリーダー細川眞理子氏が作詞・作曲。珍しいアイヌ語の歌や面白い踊りを取り入れたこの手づくりのこどもミュージカルは大評判になった。その後、年一作のペースで新作が発表され、87年に「札幌こどもミュージカル」が設立された。

 こどもミュージカルのメンバーは3歳から17歳の子どもたち約130人。毎月6回、細川氏と妹の岩城節子氏の指導のもと、歌と踊りの練習に励んでいる。年長の子が小さい子どもの世話をし、お母さんたちが練習や公演の準備を手伝っている。練習場所は細川氏のご主人が経営する病院のリハビリ室。練習日の夕方には、元気いっぱいの礼儀正しい子どもたちが集まり、明るい歌声が聞こえてくる。

 ミュージカル上演を通して、同グループはさまざまな地域の人々と交流を深めている。宗谷岬の猫と子どもの物語「ポロの岬」では、舞台となった稚内の子どもたちと交流し共演。86年には、こどもミュージカルがポーランド国営テレビで紹介されて大反響を呼び、翌年、ポーランドの子どもたちを札幌に迎えて共演した。その後もテレビを通じた国際文化交流が続き、ポーランド側の招きに応じて子どもたちとスタッフは2度も同国を訪問している。

 子どもたちと主婦のミュージカル活動にはあたたかい支援の輪が広がっている。社会人の男声合唱団「さけをうたう会」が結成されて毎回の出演と当日の会場整理などを担当していることをはじめ、ポーランド公演に際しては、道内外の文化人、報道関係者、財界人が実行委員会を結成、強力にバックアップしている。また、資料提供や指導など、アイヌの人たちの側からも数多くの協力が寄せられている。

 北海道の自然と風土の中で育まれたアイヌ民族の文化を見直し、ミュージカルという新しい表現方法で人々に伝えることからスタートした札幌のこどもミュージカル。子どもたちの伸びやかな感性は、神様や自然と語り、小動物と共に生きるアイヌの精神文化を素直に受けとめ、生き生きとした舞台を生み出した。いま多くの出会いを経た彼らの舞台からは、世代をこえ、地域をこえ、文化の違いをこえ、外国にも通用する本物の感動が伝わってくる。

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