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サントリー地域文化賞

活動詳細

関東

東京都 墨田区 1988年受賞

下町タイムス社
ミニ・タウン紙発行を軸とした下町文化再発見と活性化の試み

代表:今泉 清 氏

1999年11月更新

写真
「江戸の技・50人展」
(錦糸町・西武)

 下町は庶民のふるさとであり、人間の豊かな心が通い合う町にしたいという願いで、東京の下町に丹念に眼を向け、そこに息づく伝統や人材を発掘して活性化しようとして、ミニ・タウン紙「下町タイムス」が創刊されたのは1973年であった。

 「下町には庶民の歴史があり人材が豊富です。これらを発掘すると共に、東京、ロンドン、ニューヨークなど世界の下町の交流を深め、世界の下町連合のネットワークを作りたい。自分の年齢の数だけ世界の下町を廻って、情報を交換したいのです」と、代表の今泉清氏は目を輝かせる。

 「下町タイムス」には庶民の生きざまや、歴史が描かれ、ここで生活する人々への情報が掲載されているが、これと併行してユニークなイベントの企画が意欲的に行われている。たとえば松尾芭蕉が奥の細道に江戸深川を旅立ってちょうど300年という事でイベントが企画された。

 また下町には多くの国際留学生が働いているが、彼らを支援する基金を集めるため、各家庭から品物の提供を受けて、富岡八幡宮でリサイクル市を開く企画には、自治体や政党をはじめとして支援の輪が大きくひろがっている。漸く美しさを取り戻してきた隅田川周辺の浄化運動などをプロデュースしてきたのも下町タイムス社である。

 下町には伝統的な職人芸が伝わっているが、これらを発掘保存すると共に出版物として紹介するのもその仕事の一つである。出版にはそのほか下町のくらしや祭りの紹介、下町散策のためのイラストマップ、はては外国人のための英文ガイドブックまで50点におよんでいる。

 現在、下町タイムス社の活動は、印刷物関係、文化振興事業などのイベント企画、自治体からの委託研究等に三分されている。「下町タイムス」を核として、幅広い多様な活動が行われ、その視点も隅田川周辺の下町からさらに広く湾岸地帯へと広がろうとし、一方で世界的視野で下町の交流へと活動が伸びようとしている。そのたくましい企画力と行動力に大いに刮目したい。

 近年、長谷川平蔵の実録本『鬼平を歩く』の発刊で“平蔵ゆかりの地を歩く”という企画を行い、出版とイベントを見事に結びつけた。また、今泉氏の念願であった伝統工芸押し絵羽子板第一人者・西山鴻月氏の本を刊行する。

 1999年11月、「下町タイムス」はその前身から数えて30年、300号を迎える。さらなる今後の飛躍発展を期待したい。

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