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サントリー地域文化賞

活動詳細

中国

岡山県 岡山市 1985年受賞

夢二郷土美術館
郷土の生んだ芸術家・竹久夢二をテーマとしたユニークな美術館活動

代表:松田 堯 氏

1999年11月更新

写真
竹久夢二と大正時代
をイメージした本館

 瀬戸内の温暖な気候となだらかな岡のような山々が海へと続いてゆく明るい風土の中に、古くから独特の吉備文化の栄えた岡山。1884(明治17)年に岡山県邑久郡本庄村に生まれ、大正時代に一世を風靡した漂泊と抒情の画家竹久夢二は、16歳までの多感な青春期を過ごした岡山の気候風土・文化の影響を色濃く受け、日本の伝統と新しい時代の波との出会いの中から独自の境地を切りひらいた。

 「夢二郷土美術館」は、本庄に今も残る夢二生家と、1977年に復元された夢二のアトリエ「少年山荘」、岡山市郊外のふるさと村「リョービガーデン」を分館とし、さらに岡山市内後楽園外苑の市文化ゾーンの一角に84年、夢二生誕百年を記念して本館を新築、夢二芸術を集めて一般に公開し、美術品の保存・研究に努めている。

 戦後間もない1951年、大阪での夢二の絵とのふとした出会いから、竹久夢二の芸術と人柄に惚れこんだ同美術館の初代館長・松田 基氏は、生まれ故郷の岡山に夢二の絵を“里がえり”させることを決意。66年、コツコツと買い集めた秘蔵のコレクションを公開して「夢二郷土美術館」をオープンした。現在、同美術館のコレクションは夢二の原画約1000点、資料は1500点にものぼり、夢二に関するものでは、最高の所蔵点数を誇る。

 大正ロマンチシズムの旗手であり、庶民的な通俗性の中に時代の美と生活とファッションを創造したと言われる夢二芸術が、地方における個人美術館のハンデを乗り越え、その活動領域のすべてにわたって集められている。本館内には夢二作詞の歌謡が流れ、絵画以外にも詩や小物、挿画、写真など幅広い作品を展示、生家の保存・修復、アトリエの復元、大正時代と夢二の抒情性を表現した本館建物など、夢二が生きた時代の雰囲気を髣髴とさせる努力が十全になされている。郷土の生んだ画家をテーマに展開させている個性的で詩情豊かな美術館活動は、夢二ファン以外の人びとの心をも広くとらえつつある。

 毎年夢二の誕生日には全国の愛好家や夢二ゆかりの人々が岡山に集まり、「郷土夢二の会」が開かれる。松田基氏は1998年に亡くなられたが、弟の堯氏が遺志を継ぎ、「夢二郷土美術館」の活動は今も活発に続けられている。同美術館による全国各地での夢二展の開催を通じて、生まれ故郷の岡山は夢二ファンの心のふるさととなっている。

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