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サントリー地域文化賞

活動詳細

中部

福井県 福井市 1985年受賞

朝倉氏遺跡保存協会
地域住民による遺跡の保存発掘を通じたふるさとづくり

代表:石田 昇 氏

1999年11月更新

写真
会員による遺跡発掘風景

 福井市の東南10キロメートル、一乗谷は越前の支配権を握った朝倉氏が、1471(文明3)年から5代百年の間栄華をつくした所である。応仁の乱で都を離れた文化人も多くここに来て、一乗谷文化は絢爛と花咲いた。しかし義景に至って織田信長に滅ぼされ、1573(天正元)年に焼亡したのである。この地はその後耕地と化し、城下町の遺構が地下に埋もれ、そのまま現代まで良好な状態で保存されていた。戦国時代の武家都市の貴重な遺跡として1966年から継続して発掘が行われたが、71年に山城跡を含む278ヘクタールが特別史跡に指定される事となった。

 遺跡は一乗谷川に沿って帯状に広がる狭い平地と、その両側にそびえる広大な山地からなり、山間部には山城・砦・櫓などの防御施設が見られる。上城戸と下城戸の間の山麓平地には土塁で囲まれた居館やその庭園、武家屋敷、寺院それに町屋や職人たちの居住区の遺構が、街並までも判然と残っている。また当時の文化・芸術や生活を語る貴重な埋蔵物が多く発掘され、一大史跡公園となっている。

 この地区、即ち城戸之内部落には52世帯があり、農業で生計を立てていたが、史跡指定に応じて22ヘクタールの耕地を公有地に譲る事となり、収入の途を失う羽目となった。この52世帯200名の住民が1971年7月に社団法人朝倉氏遺跡保存協会を結成し、遺跡の調査・整備を分担する福井県、および保存・管理を分担する福井市とタイアップして、貴重な遺跡を保存活用して、21世紀につなぐ文化のふるさとづくりの活動を行い、それによって新しく生きる道を求める事となった。

 同協会は会員を挙げて、復元武家屋敷の管理とその案内、城山登山道の整備、一乗谷川の美化保存、観光客へのサービスの提供などの日常活動を積極的に行うほか、数々のイベントを企画実行している。江戸時代に行われていた義景の追悼供養祭を復活させ1972年から毎年開催している「越前朝倉戦国まつり」をはじめ、朝倉太鼓や越前朝倉薪能、義景ゆかりの糸ざくらの里づくりなどが着々と成果を挙げ、最近では年間28万余人の観光客を誘致するまでに至った。また次代にこの活動をつなぐものとして、文化財愛護少年団の育成が計られており、さらに城戸之内以外の谷々にもこの輪をひろげようと努力がなされている。

 文化財の保護と現在の生活維持をどう調和させるかについては極めて困難が多いが、一乗谷における活動は、遺跡の保存活用とふるさとづくりの目標のもとに、両者が昇華されている例として大いに評価されるべきだろう。

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