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サントリー地域文化賞

活動詳細

中部

長野県 長野市 1984年受賞

信州児童文学会
児童文学の創作・研究と啓蒙普及活動を通じ、全国的な規模で児童文化の発展に寄与

代表:宮下 和男 氏

1999年11月更新

写真
「とうげの旗」

 1956年、信州大学教育学部の2人の学生を中心に「とうげの旗」同人社が結成され、児童文学誌「とうげの旗」が創刊された。部数は90部であった。その創刊宣言には次のように謳われている。「われわれは都会主義に甘んじることなく、真に地方の児童にも、十分に訴えることのできる、新しい児童文学創造の使命を痛感し、ここに『とうげの旗』を創刊する」。1959年、組織の名称を「信州児童文学会」と改め、その後、同人誌を発展解消、少年少女のための文芸誌として飛躍させ、発行部数が8千部となった現在まで、この精神は会員たちの間に脈々と流れ続けている。

 信州児童文学会は、この「とうげの旗」を通じて、童話作家を陸続と輩出して来た。これまでに会員の作品は、信州児童文学会の手により或いは中央の出版社の手により、百冊をこえる作品集として出版されているが、それらの作品により、「赤い鳥文学賞」をはじめ「厚生大臣賞」、「小川未明賞」など数々の受賞に輝き、全国的にも最高の評価を得ている。

 しかし、信州児童文学会が地域の文化活動として特筆されるべき点は、会員たちが創作家として孤高に留まることなく、「とうげの旗」以外にも、様々な媒体を駆使して、長野県における児童文学の普及に邁進していることである。

 その一つは、信濃毎日新聞のこども欄に14年にわたって連載された「童話シリーズ」「信濃のむかしシリーズ」などの活動で、県内の児童文学愛好家の層を大幅に広げることに寄与し、現在も単行本の形で多くの子どもたちに愛読されている。また、NHK長野放送局による子ども番組にも会員の分担で童話を執筆している。さらに、信州に伝わる民話を会員が発掘したものを民話集や絵本にまとめる活動を行い、これらは『信濃の民話』全13巻、『信濃の民話・絵本』全20巻となって結実した。84年からは、「信州のこわ〜い話」「信州の不思議な話」「信州のおもしろ〜い話」などをシリーズとして発行。この他に、世界の童話の翻訳・紹介や児童文学作家による講演会、絵本の原画展など様々な普及啓蒙活動を行っている。

 一方、児童文学創作の振興のために、1979年「塚原健二郎児童文学賞」を制定、全国の創作家からの注目を集め、88年からは小中学生を対象とした創作童話コンクールを始め、92年からは「とうげの旗作品賞」を制定、会員の創作作品の質的向上を支えることになった。

 「とうげの旗」は96年に創刊100号を迎えた。信州児童文学会は、純粋な創作と啓蒙普及活動を両輪として、地方に拠りながら全国的な児童文化に影響を与え続ける貴重な活動を今後も続けていくに違いない。

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