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サントリー地域文化賞

活動詳細

北海道

北海道 旭川市 1983年受賞

木内 綾氏(個人)
北海道の自然を織込んだ新しい伝統工芸「優佳良織」を創出

1999年11月更新

写真
国際染色美術館

 四季おりおりに美しく色どられてゆく北海道の自然をたて糸とし、高度に洗練された染織の技法をよこ糸として織りあげられた織物。それが木内綾さんの創出した「優佳良織」である。

 木内綾さんは北海道に生まれ、東京での学生時代に美術工芸、特に織物に興味を持つ。戦後、北海道工業試験場の指導を受けて織物の研究、試作を始め、1962年に北海道の自然を織り込んだ作品を創作、優佳良織工房を発足させた。しかし、ひとつの工芸品が名のあるものとなり、その地方で産業として根付くまでには幾多の試練を経なければならなかった。伝統の壁は厚く、各地の染織の専門家からはまともに相手にされず、また地元の人々からさえ理解を得られないという状態が続く。それは伝統のないところに新しい伝統を打ちたてる際の宿命であったと言える。

 けれども、北海道に新しい織物を生み出そうとする彼女の熱意と、一つの作品に200種以上もの染色によって織る高度な技術を体得するまで研鑽を積んだ彼女の姿勢は、やがて作品の評価となって結実する。日本民芸公募展最優秀賞(1977年)など国内での数々の受賞をはじめ、海外においても、フランス、ギリシャ等各国へ出品を重ね、78年にはハンガリー国際織物ビエンナーレの金賞を受賞、さらに84年には、ニュージーランドの12の美術館で2年間にわたる巡回展を開催するなど、国際的な美術工芸品として認められるまでになった。ちなみに「優佳良」の名付け親は、版画家棟方志功である。

 一方、彼女は作品に注ぎ入れたのと同じく郷土への深い愛情に支えられた活動を、優佳良織を通じて行って来ている。それは、後継技術者の育成により量産の道を拓くことで、優佳良織を北海道を代表する民芸品として育て、新しい産業にまで高めたこと、そしてまた、今や北海道の観光名所となった北海道伝統美術工芸村│「優佳良織工芸館」「国際染織美術館」「雪の美術館」の建設に見られるように、旭川を染織、工芸の中心地として育てようとする努力、さらには工芸品の制作に携わる織りの会員の多くを旭川の母子家庭から雇用することによっての地域社会への貢献である。

 こうした全体的な活動が認められ、87年北海道文化賞、95年文化庁長官賞などを受賞した。

 「優佳良織の美しさがその生産・販売の組織として会社を生んだ。工芸品が会社を作ったのであって、会社が工芸品を作ったのではない。文化が産業になったと言える」とも評されているように、木内綾さんのこれまでの活動は、地方に根ざした文化伝統の創出による新しい文化産業のあり方を如実に示すものとして高く評価されるだろう。

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