SUNTORY CHALLENGED SPORTS PROJECT
谷真海の「チャレンジ、再び」 第5回「手応えをつかめた5月の連戦」
晴天に恵まれた横浜の沿道からの声援が、大きな力になることを実感しながら、ゴールへたどり着くことができました。
5月11日はパラトライアスロンのワールドシリーズ横浜大会が開催され、私も3年ぶりにこの大会に戻ってきました。今シーズン前半は、このハイレベルな横浜大会への出場を目標としてきました。
自国開催ということと、東京から近いこともあって、家族はもちろん、サントリーの人たちや練習仲間も沿道に駆けつけてくれました。夫と子どもたちは目立つように派手な服で私の視界に入りやすいようにしてくれていて、ゴール前でハイタッチを交わすこともできました。
結果は5位。前を行く選手の背中を最後まで追って、充実したレースをすることができました。4位まで13秒、3位の表彰台まで16秒、とランで追い上げることが出来ました。
「真海が帰ってきてうれしいわ!」
ゴールした後、笑顔で会話したのは米国のケリー・エルムリンガー選手です。今年45歳になるケリーもママアスリートとして活躍していて、今大会も同じクラス「PTS4」で優勝。パリ・パラリンピックの代表争いでもポイントでトップを走る実力者です。私が2人目を産んで競技に戻ってきたことを伝えると、「知ってるよ!知ってるよ!おめでとう」ととても喜んでくれました。
レース中はライバルであっても、ゴールをした後は互いを称えあえる仲間の存在は、とても励みになります。自分より年上の選手も、20代の若い選手も、幅広い年代がパラリンピックという大舞台を目指して切磋琢磨しています。「みんな、本当にパラに出たいというモチベーションで頑張っているんだな」と感じます。だから、厳しいトレーニングも乗り越えて、レースに挑んできている-。アスリートのこうした努力と切磋琢磨する姿がパラリンピックの価値を押し上げていくんだと思うと、私もパリ大会への道のりは険しいですが、途中で投げ出したりはしたくないなと気持ちが引き締まります。
私にとっては復帰したばかりのシーズンで、ポイントを積み重ねなければならず、横浜大会の1週間後の5月18日には、ウズベキスタンのサマルカンドで行われたパラカップに出場してきました。
実は横浜大会の直前に疲労から体調をこじらせ、前日の海での試泳も回避したほどでした。その次のレースまでも1週間しか間隔がなく、疲労も蓄積していましたが、直前に何とか体調も戻り、レースに望むことができました。競技復帰後は大きなけがに見舞われることなく、タフな連戦とはいえ、レースに出場し、毎レースごと成長の手応えを感じることができていることは幸せなことです。
ウズベキスタンのレースでは、獲得ポイントや4位という結果以上に収穫も手にすることができました。
今回のレースではランのタイムが同じクラスの出場選手全体で1位だったのです。もともとは瞬発系の走り幅跳びから転向したこともあり、長距離のランには苦手意識が強かったのですが、日々のトレーニングの中で体の使い方がよくなってきているのではないかと実感できます。
東京大会までは、スイムでできるだけ攻めて、バイクとランで耐えるというレース展開が多かったのですが、5月のこの2レースではランで追い上げることができました。前を行く選手には残り2キロで一時は背中をとらえるところまで迫ることができました。もちろん、相手も必死。私が同じPTS4の選手だとわかると、力を振り絞って逃げ切りを図りました。結果的に追い越すことはできませんでしたが、表彰台まで7秒というタイム差は自信にもつながりました。
今シーズンは思いのほか、体が動けていて、タイムにも手応えがつかめています。それでも、ランキングで上位選手とのポイントの差はなかなか埋まりません。それは、パラトライアスロンのレベルが上がっていることを意味します。うれしい悲鳴です。
6月はアジア選手権とワールドシリーズで最大3試合に出場予定です。ハードな連戦ですが、1ヶ月後には選考対象となる全てのレースが終わります。
パリ大会への意識はもちろんありますが、過去4大会と比べたら、出場に固執しているわけでもありません。不思議な感覚なのですが、チャレンジすること、自分と向き合うこと、成長を実感することを心から楽しむことができています。最後まであきらめることなく、自分の力を出し切る。いまは、そのことだけに集中したいと思っています。
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このコラムでは、アスリートたちの無限大の可能性への挑戦を応援する「サントリー チャレンジド・スポーツ プロジェクト」の取り組みと合わせて、私自身の日々のスポーツとの交わりや楽しさを綴ります。(掲載不定期)