SUNTORY CHALLENGED SPORTS PROJECT
谷真海の「チャレンジ、再び」 第4回「復帰二戦目で表彰台!仲間とともに前へ。」
首からかけたメダルが、床についてしまいそうなくらいまだ小さな次男の表情は、笑顔であふれていました。長男も「ママ、頑張ったね」と夫とともに喜んでくれました。「すごくうれしいご褒美をもらえたんだなあ」。パラトライアスロンの競技に戻ってきた実感とともに、家族が喜ぶ姿に心が温かくなりました。
トルコのイェニシェヒルで4月21日に開催されたワールドトライアスロンパラカップで、出場クラスの3位に食い込み、復帰2レース目で表彰台に立つことができました。
スポーツの素晴らしさはチャレンジする姿勢やその過程だと思っていますが、結果が出てメダルをもらうと「次も頑張ろう」と励みになり、新たなモチベーションにもつながります。
今回のレースを振り返ると、スイムとランについては、東京パラリンピックに出場した当時の試合勘をかなり取り戻せてきている感覚がありました。タイム的にも当時の記録と変わらないレベルまで引き上げることができています。もちろん、3年前とは年齢も体も違います。とことんまで追い込んでみた当時とは違い、復帰後はレース本番のコンディションを優先して、トレーニングでも疲労を蓄積しすぎないよう、疲労マネジメントを以前より心がけています。その効果として、レースでのパフォーマンスが高まってきているのかもしれません。2年半のブランクがありシーズンイン前はかなり不安でしたが、ついつい欲が出てしまうくらい、スムーズにレースに戻ってこられていると感じます。
トライアスロンは一人でスイム、バイク、ランをこなす過酷な競技ですが、それゆえに日々の練習では、練習パートナーや切磋琢磨する仲間の存在が欠かせません。
私の練習をサポートしてくれる「Team Mami」の一員に、今回は五輪に3大会連続で出場した実績がある庭田清美さんが、メインのパートナーとして加わってくれました。私がトライアスロンを始めた当初からサポートしてくれるトライアスロン界のレジェンドでもある白戸太朗さんとともに、頼もしい存在です。
最初は一人でトレーニングを続ける覚悟もしていましたが、今では、庭田さんにお願いをして本当によかったと思っています。コーチ、練習パートナーとの関係において、欠かせないのは信頼関係です。庭田さんは、自然が相手となるトライアスロンにおいて、幾多の修羅場をくぐり抜けた経験があり、女性アスリートの立場からもアドバイスをくれます。私にとっては技術面もメンタル面も聞きたいことがたくさんあります。練習前後や一緒にランニングをしているときなどに、こうした経験を伝えてもらい、練習やレースとの向き合い方のヒントを見つけるきっかけとなったりもします。
バイクとランを続けてこなす高強度のポイント練習では、速い選手を連れてきて、より安全に追い込めるよう工夫して下さったり、荷物を置いた場所を離れなければなりませんが、見守りサポーターを連れてきて下さったりと心強い限りです。庭田さんの旦那さんも、とても素敵な写真で練習の様子を撮影してくれたりします。
早朝のスイム練習では、競技を通じて知り合った仲間の皆さんに背中を押してもらいます。トライアスロン愛好者の中には第一線で活躍するビジネスパーソンも数多くいます。私が通っているプールでも、仕事前に練習し、颯爽と仕事に向かっていく人たちが沢山います。そんな人たちから刺激をもらい、切磋琢磨して強化を図っています。
こうした環境に身を置くことができるのは、スポーツを続けているからだと実感します。パリ・パラリンピックを頭の片隅に置いてレースに戻ってきましたが、この種目に転向した理由は、年齢を重ねても長く競技を続けていくことができるということが大きな理由でもありました。最近は、夫ともよく話します。
「パリがゴールじゃなくて、その先も見据えて、もっと競技の奥深さを知りながらトレーニングを続けていきたいな」
パラリンピックにチャレンジするという素晴らしい時間を過ごしながら、もっと先を見据えてスポーツを長く楽しんでいきたいと思っています。
次戦は5月11日の「ワールドパラトライアスロンシリーズ横浜大会」を予定しています。早朝のレースになりますが、自国開催で過去に何度か表彰台に上がっている相性の良い大会です。もちろん、競技のレベルも上がっており、今回はタフなレースになることを覚悟していますが、しっかりと準備をして臨みたいと思います。
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このコラムでは、アスリートたちの無限大の可能性への挑戦を応援する「サントリー チャレンジド・スポーツ プロジェクト」の取り組みと合わせて、私自身の日々のスポーツとの交わりや楽しさを綴ります。(掲載不定期)