総売上40億! サントリー「VARON」を生んだ若きブランドマネージャー
総売上40億! サントリー「VARON」を生んだ若きブランドマネージャー

HEALTH CARE

総売上40億! サントリー「VARON」を生んだ若きブランドマネージャー

24.03.25

新卒として入社した某大手メーカーでは女性用化粧品の部署に配属され、PR・プロモーションを7年間担当。2017年4月にサントリーウエルネス株式会社に入社後、30代前半にして大人の男性用スキンケアブランド「VARON(以下ヴァロン)」のチームリーダーに抜擢! 立ち上げから大ヒット商品になるまで……あくなき情熱を「ヴァロン」に注ぎ続けてきた西山雅大さん。そのプロセスにおいて、“転職組” だからこそ見えてくる、サントリーの「やってみなはれ」精神について、語ってもらいました。

「ヴァロン」誕生前夜。
ブランド担当者が見た勝ち筋

いまや総売り上げ40億円を誇る大人の男性用スキンケアブランド「ヴァロン」──その立ち上げを命じられたチームに配属された当時は、若い世代の間でこそ「美容男子」という言葉が浸透しつつはあったものの、ミドル・シニア世代の大半は、まだ「スキンケア」という意識がほとんどなかった……と振り返ります。

0325_varon_02.jpgヴァロンのオールインワンセラム(120ml)は約2ヶ月分。香りはFresh、Original、Classic、Unscented(無香料)の4タイプ

西山さん:サントリーウエルネスが健康食品の事業を行なっているなかで、ミドル・シニア世代の男性にインタビューする機会があったんです。お話を伺っていると、健康だけじゃなく、外見について悩みをかかえている人が意外にも多かった──。

コロナ禍でオンラインでの打ち合わせが主流になったとき、モニター上に若い社員たちと自分の顔が並ぶと、老化がより際立って……みたいな意見を複数聞きました。男性って、とくに中高年世代は自分の顔をまじまじ鏡とかで見る習慣がないですし、人と比べることも滅多にありませんから。

とは言え、ドラッグストアに行っても、男性美容アイテムは、若いイケメンタレントのポスターが貼ってあって、何となく無縁な感じがするし、デパートに行っても、店員さんに勧められたものをそのまま買って、緊張して疲れてしまったり。

0325_varon_03.jpg今年で37歳の西山さん。グループ会社を含めてこの年齢でのリーダー職はそれほどめずらしいことではないそう

モニター調査でミドル・シニア世代男性らの切実な声と接していくうち、純粋に「この人たちの何かお役に立ちたい」という思いが募っていったという西山さん。サントリーではフロンティア的な市場であった男性スキンケアの分野で “勝ち筋” が見えたのは、一体どんな瞬間だったのでしょう。

西山さん:最初はサンプルを配ったときのリアクションです。モニターさんに10日間試していただいて、その9割以上に「効果を体感できました」と答えていただけました。僕は女性用スキンケアも担当していたからよくわかるんですけど、対女性だと、そう簡単にこんなスコアは出ません。

女性は毎日スキンケアをなされているわけですから、劇的に高い数字は望めない──良くても7割といったところでしょうか。

0325_varon_04.jpg洗面台にあっても自然に馴染むよう、ボトルのデザインにもこだわりが

また、サントリーウエルネスでは、一社員が社長や役員のところに行って話しをするのも受け入れられている社風なので、発売3ヶ月ほど前には役員クラスの方々にも直接試してもらいました。社内なら忌憚のない厳しい意見が集まる想定をしていたのに、やはり9割近くの人たちが「これ、いいね」と言ってくれて……。女性秘書も「ツヤ感出てますよ」と褒めてくれて、いつもはコワモテな(笑)役員たちの無邪気な笑顔を見て、「いけるな!」と感じました。


サントリーだからできた
スキンケアへのアプローチ

「ヴァロン」の成分のひとつに、ウイスキーから抽出される「樽材エキス」があります。しかも、その研究は20年以上も前──2000年からスタートした、と言います。

西山さん:当初は「化粧品をつくる」という目的で研究がはじまったのではなく、「ウイスキーの成分を何かほかのものにも転用できないものか?」という発想だったと聞いています。

ウイスキーにはポリフェノールがたくさん含まれている、そのポリフェノールがウイスキー以外の商品開発に役立つのではないかと。具体的な商品化が見えていたわけではなく、ただ「ウイスキーの可能性」について研究を重ねていた結果、偶発的に「ヴァロン」にも応用できそうだと、採用にいたったのです。

0325_varon_05.jpgオールインワンセラム以外に洗顔料やボディウォッシュもラインナップ

ほかの企業なら「もう諦めなさい」と判断されてしまってもおかしくないほどの、気が遠くなるような数の試作を繰り返してきた地道な努力が実り、2011年に「樽材エキス」の抽出に成功。「これだけの回数の試作はサントリーだからこそやらせてもらえた」と、研究員も口を揃えるのだそう。

西山さん:この話を聞いて、社員の「ものづくり」に対する熱い想いや夢を大切にしてくれる会社だな、と改めて感動しました。

企業理念のひとつにある「やってみなはれ」の価値観にもとづく──「短期的な利益ではなく、長期的に価値があることならやり続けなさい」という姿勢を会社が示してくれたから「ヴァロン」が誕生しました。

いい意味で世の中の通例を気にしない……というか。何の土台も前例もなかった男性美容の商品づくりをこうも短期間で実現できたのもそのおかげです。

0325_varon_06.jpg初めての方用の「10日間体験キット」。香りの異なる20mlの小包装などが同封

商品開発時には外部のモニターさん約150人からひとり1時間以上かけて徹底的にリサーチを行いました。

モニタリング自体は珍しくありませんが、「150」という人数はなかなか他社ではありません。それができたのも、サントリーウエルネスの社長・沖中からの「調査にはどんなに時間と労力をかけてでも徹底的にやりなさい」という言葉があったからです。

男性スキンケア市場の現状を鑑みたうえで、「ここで一気に男性スキンケアのプランを進めていこう!」と決めてからのチームのエネルギーも、サントリーらしいと感じました。メンバー数はほかの美容系企業と比べ、圧倒的に少ないかもしれません。でも、だからこそ優先順位が絞りやすく、その “逆境” がスピード感と一体感に繋がっているではないか、と思っています。

0325_varon_07.jpg「2023 第36回小学館DIMEトレンド大賞」ライフスタイル部門を受賞した際の西山さん

「ヴァロン」のヒットを陰で支えた
上層部の大きな懐

モニターの9割の方が「効果を体感できた」ことや、社内評判の良さがあったぶん、失敗は絶対に許されない。そんな発売直前のプレッシャーは並大抵じゃなかった……と、西山さんは苦笑します。

西山さん:商品に対する手応えは充分に得ることができたので、次の課題は「どう体験の場を増やしていくか」「一人でもたくさんの人にヴァロンを試していただくか」でした。

まずは、全社員向けの商品説明会を社内で開催しました。まったく違った部署やグループ会社間の風通しの良さはサントリーならでは。そこで「ぜひ試してみてください!」「もし良いと感じたならぜひ広めてください!」と。

0325_varon_08_atari.jpgオンラインも駆使して全社員に対して商品説明の場が設けられた。飲食店の営業マンにとっても関心の高さがうかがえる

幸いにも、そのときの反響がかなり大きくて、「会食に今度持っていくよ」「銀座のクラブに営業へ行くとき、配ってみるよ」などと、皆さんが言ってくれました。

営業マンとしても、お酒の話題だけではなく、たまには目新しいサンプルを持って行ったほうがお取引先にも喜んでいただけると思いますし、お客様に配る用として、ご自身で100個購入してくれた……というクラブのママさんもいたそうです。そのおかげで、発売前から2万人以上の男性にマンツーマンでお試しいただけることが確約できたのです。

ヴァロン立ち上げの頃は、コロナ禍真っ只中で、出社もできず、対面でのコミュニケーション量は圧倒的に不足していた、とのこと。こうした特殊な環境においても、多干渉しすぎず……でも、どこかで上司が見てくれているという安心感があった、という西山さん。

西山さん:上司の立場からすると、30代前半の社員にブランドマネージャーを任せるのは大なり小なり不安だったはずです。けれど、最適な距離感で僕たちを見守ってくれているんだろうな……という懐の広さはひしひしと伝わってきました。

周囲にちょっと厳しいことを言われたときでも、さりげなくフォローしてくれたり。その絶妙できめ細やかなバランス感覚にはとても感謝しています。

CMであえてタレントさんを起用しなかったのは、イメージ戦略よりも本物の体験者による偽りないリアルな声をユーザーの皆さんにお届けしたかったからなのですが、その考えを後押ししてくれたのも「有名人で注目を集めるのではなく、実際に使用した方の生の声が届くようにしては?」という社長のさりげないアドバイスでした。きっと、上司の方々も若いころに同様の経験をされてきたから──そういう距離の取り方がもはや当たり前の社風となっているでしょう。

0325_varon_10.jpg2022年、「ヴァロン」はサントリーの企業理念の「やってみなはれ」を実践したチームを表彰する「やってみはれ大賞」を受賞

0325_varon_09.jpgチームメンバーで勝ち取った「やってみはれ大賞」

新たなフェーズを迎える
「ヴァロン」の次なる挑戦

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2024
3月9日から新しいCMが全国でオンエアされ、それに合わせていろいろなイベントも開催されているようです。その詳細についても、尋ねてみました。

西山さん:今回のプロモーションは「家族との関係をより良くしよう」というテーマをいっそうシャープに立たせています。サントリー自身が「社員が輝かなければお客様に生き生きしていただくことなんてできない」という発想から、社員を支える家族も含めてとても大切にしてくれる会社ですから、このような着眼が自然とできるのかもしれません。

これまでは「自発購入」がメインではあったものの、ここからは誰かにお勧めされということも購買意欲につながる大事なポイントなのでは……と、西山さんは今後を冷静に分析します。

西山さん:じゃあ、「誰がお勧めするのか?」──となれば、やはり一番近くにいるパートナーをはじめとする家族だと思うんです。

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女性って、いわば「スキンケアのプロ」じゃないですか。だから、夫から「ちょっと使い方がわからないんだけど…」みたいな質問が出てくると、パートナーも「ちょっと貸してみて」「香りがいいわね」とか……、新しい会話のきっかけができるんです。

女性は今日の化粧ノリの良し悪しで気持ちが変わるとよく言われますが、それは男性も一緒です。肌の状態が良くなれば「今日は頑張ろう!」ってことになるはずですから。

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サントリーウエルネス株式会社 スキンケア事業部 

西山雅大┃にしやま・まさひろ

1987年生まれ、東京都出身。早稲田大学教育学部卒業後、某大手メーカーに入社。女性用化粧品の部署に配属され、PR・プロモーションなどを7年間担当。2017年4月にサントリーウエルネス株式会社に入社。女性用美容ドリンクのブランド「リフタージュ」を約3年、女性用スキンケアブランド「エファージュ」を約1年間担当。2020年に男性用スキンケアブランド「ヴァロン」のチームリーダーに抜擢され、その立ち上げから携わる。趣味はゴルフ。

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サントリー「ヴァロン」公式サイト

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