スタートアップも「やってみなはれ」!サントリー流新規事業の見極め方
スタートアップも「やってみなはれ」!サントリー流新規事業の見極め方

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スタートアップも「やってみなはれ」!サントリー流新規事業の見極め方

24.05.15

2030年までに新しい成長事業の確立を目指しているサントリーグループ。基幹事業である酒類、飲食料品、健康分野だけに留まらず、「第四の柱」となる新しい価値の創出に取り組んでいます。未来を見据え、次なる一手を模索する開拓者たちの奮闘に迫る本シリーズ。第1回は、サントリーホールディングス株式会社未来事業開発部でオープンイノベーションを推進する古川真希さんにお話を聞きました。

社会にイノベーションを巻き起こす
未来事業開発部のミッション

「やってみなはれ」の言葉に代表されるように、サントリーには企業のDNAとして新しい挑戦を続ける風土が醸成されています。そのフロンティアスピリッツをまさに体現しているセクションが、2021年6月に新設された「未来事業開発部」です。

古川さん:あまり耳馴染みのない名前かもしれませんが、サントリー全体の成長に向けたイノベーションの推進をミッションとしているのが、私たちの部署です。

具体的には、①有望な技術やノウハウを持つスタートアップ企業に出資し、協働しながら事業を作っていくオープンイノベーション、②新しいモノやサービス・価値をゼロから創出する新規事業開発、③新たな事業を創る人財(イントレプレナー)の発掘・育成。

これを3つの柱として、次なる成長事業の確立を力強く推し進めています。

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そのなかでも、私が主に担当しているのはオープンイノベーション。自社だけでゼロから始めるにはとんでもなく時間がかかるので、不可能とも思えるような新規事業の開拓を、パートナー企業と一緒に進めていこうとしています。

そのパートナーシップの在り方として、魅力的な技術を持つスタートアップ企業に出資し、お互いの課題を照らし合わせて生まれる新規事業の種をどんどん具現化していくという取り組みを行っています。

私が担当している具体的な事例のひとつが、ユーザーごとにパーソナライズされた栄養グミを3Dプリンターでつくって届けてくれる「NOURISH3D(ナリッシュト)」というサービスです。イギリスの「Rem3dy(レメディ)」という企業のプロダクトで、そこにサントリーが出資をして、日本でのサービス展開を協働しながら事業化が進んでいます。

0515_miraijigyo_#01-03.jpg7種類の栄養素を1粒のグミにパーソナライズする「NOURISH3D」。ライフスタイル、食習慣などをもとに約600億通りの組み合わせからユーザーに最適なサプリメントを提案できる。

0515_miraijigyo_#01-04.jpg「NOURISH3D」は、「Japan Beauty and Fashion Tech Awards 2023」で特別賞を受賞。

「熱狂」できるパートナー探しで
見据える分野は無限大

商品やサービスにいくら革新性や伸びしろがあったとしても、それだけでは成功が難しいのがスタートアップ投資。古川さんが担当者として大事にしている視点とはどのようなものでしょうか。

古川さん:新規事業の可能性として見据えている分野は非常に幅広く、やらないことを考えるほうが難しいくらいです。だからこそ、サントリーの「人間の生命(いのち)の輝きをめざす」という理念に適う事業かどうかという点を重視しています。

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また、私たちが特に注目しているのが、「フードテック」「ヘルス&ウェルネス」「サステナビリティ」「AI・データ・XR」という4領域。食や健康はサントリーの得意分野でもありますし、サステナビリティやAI分野の活用も現代のビジネスモデルを考えるうえでは、当然重要となる領域です。

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とはいえ、世の中には素晴らしいテクノロジーが数多く存在していて、ここまで絞って考えたとしても、1000件以上の有望な技術やノウハウがあるんです。

そこからさらに絞って、実際にお会いする段階に進むのが数十社、オープンイノベーションの実現性も鑑みると結果的に出資・協業につながるのは、年に5件前後というのが実際のところです 。出資後の協働のなかで、その事業の種がうまく育っていくかというところまでを考えると、本当に奇跡のような「一期一会」を模索していく仕事だなと感じています。

業務のなかで特に大事にしているのは、「社内外を問わずたくさんの人に会う」ということ。素晴らしいスタートアップ企業があって、サントリー側にもすごいテクノロジーがあるのに、担当者の私が知らなければ繋ぎ合わせようがありません。

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だからこそ、常に広いアンテナを持つことを心がけています。起業されている方や、社内で新規事業に携わっている方と話をしていると、みんな目がキラキラしていて……企業としての理念や哲学はもちろん、そういったパッションまで共有できるような事業の種に巡り合ったときは、やっぱり「ビビッ」とくる感覚がありますね。

「転職組」だからこそ感じる
サントリーならではの空気感

新規事業開発という大きなフィールドで、「やってみなはれ」精神を発揮し続けている古川さん。実は、サントリアンとしては2年目のルーキーでもあります。

古川さん:私のキャリアのスタートは公認会計士でした。監査法人で企業の財務諸表をレビューしたり、事業再生に携わったりという業務のなかで、達成された過去の数字を追いかけるだけではなく、将来の事業計画をつくるといった数字の先にある仕事にすごく興味を持ったんです。

その後、転職した官民ファンドでは、日本の生活文化の魅力を事業化し、海外需要の獲得につなげるという業務に従事していました。

0515_miraijigyo_#01-08.JPGファンド時代に仲間と。サントリーグループが展開する「響 風庭」で打ち上け?。

そこでは日本のアルコール飲料業界にも携わる機会があり、サントリーの今までの事例が自然と耳に入ってきました。特に2014年にサントリーがビームを買収したときのことは鮮明に覚えています。

そして、ファンドで仕事をしながらも投資したその先の事業開発にも深く携わりたいと考えたときに、数々の話題を見聞きしていたサントリーの社風に魅力を感じていたこともあり、2023年5月にサントリーに入社することになりました。

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入社後の研修の際、私と同年代ぐらいのウイスキー部の方が「ものづくりにおける真・善・美とは」といった話を熱心に語っていて、その熱さにものすごく引き込まれたことがありました。

ほかにも、社内でちょっとした話をしているときに、ウイスキーの「響」という名前に込められた思いについて熱く語り始める人がいたり、担当している事業の展望について目をキラキラして楽しそうに語ってくれる人がいたり……そんなストーリーがあふれるロマンティックなところも、「転職組」だからこそ気づけたサントリーの魅力のひとつかもしれません。

社会のために、娘のために、
インパクトのある事業を創りたい

すぐに結果が出るわけではなく、未来を見据えた長期視点も重要となるオープンイノベーション推進。古川さんが仕事を続けるモチベーションや将来の展望について聞きました。

古川さん:魅力を感じる投資先のプロダクトがあれば、まずはそれをとにかく好きになることが大事だと感じています。先述のグミ「NOURISH3D(ナリッシュト)」の場合は、とにかく毎日グミを食べてその良さを体感したり、周りの人に勧めてみて感想を聞いてみたり……自分が好きになって、仕事ではなく自分事としてプロダクトと向き合うこと自体がもう楽しくて、モチベーションが途切れるなんてことはほとんどありませんね。

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もうひとつ、今の業務で楽しいと感じるのは、海外との繋がり。国外のスタートアップと協業するとなると、当然英語でのやりとりも必須となります。もちろん私はネイティブではないので、思いを英語で伝えるのは大変なこともあるのですが、言葉の壁を越えて分かり合える瞬間みたいなものがパッと訪れたときは、すごくやりがいを感じます。

将来の目標としては、ひとりのサントリアンとして、社会を良くしていきたいという思いが強いですね。未来事業開発部にいるからこそ、社会が少しでも良くなるような事業を育てたり、その方法論自体を模索したりということも可能だと感じています。

今、3歳の娘がいるのですが、この子が20歳になったときに、「日本っていいな」「地球っていいな」と、感じることができる……そういうインパクトのある事業をサントリーで創ることが使命かなと思います。

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古川さんとともに未来事業開発部でイントレプレナー育成に携わっているのが大下(おおしも)眞央さん。「FRONTIER DOJO」の取り組みについてお伺いした記事「サントリーの未来を担う社内起業家を育成。FRONTIER DOJOってなんだ?」も併せてごらんください。

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サントリーホールディングス株式会社 未来事業開発部

古川真希┃ふるかわ・まき

1985年生まれ、神奈川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、監査法人にて公認会計士として従事。シンガポールのアカウンティングファームや国内の官民ファンドにて財務アドバイザーやM&Aアドバイザーとしての経験を積んだあと、2023年5月にサントリーホールディングス株式会社に入社。現在は未来事業開発部でオープンイノベーションを担当。

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