西村 朗
東京藝術大学卒業。同大学院修了。日本音楽コンクール作曲部門第1位を初め、数々の賞を受賞。エリザベート国際音楽コンクール作曲部門大賞、ルイジ・ダルッラピッコラ作曲賞、尾高賞を5回、中島健蔵音楽賞、京都音楽賞[実践部門賞]、エクソンモービル音楽賞、第3回別宮賞、第36回サントリー音楽賞、第47回毎日芸術賞。2013年紫綬褒章を受章。00年よりいずみシンフォニエッタ大阪の音楽監督、03年より6年間NHK-FM「現代の音楽」の進行役、09年より同Eテレ「N響アワー」の司会を3年間務める。また10年より草津夏期国際音楽祭の音楽監督を務める。東京音楽大学教授。
メッセージ
《ヴィシュヌの臍》は、ヒンズー教の神話に着想を得たピアノ協奏曲。原初の海に浮かぶ多頭大蛇シェーシャをベッドにして最高神ヴィシュヌが微睡み、その夢の中に化身(アヴァターラ)たちが現れます。そしてやがて、ヴィシュヌの臍から蓮華が天空に伸び上がり、その花弁の中には宇宙創造神ブラフマーが胎児の姿で眠っています。その胎児への子守唄がこの協奏曲中の挿入独奏曲〈花弁の中で〉です。この協奏曲は日本初演のあと、パリでも演奏され、面白がられました。
中川俊郎
1958年東京生まれ。桐朋学園大学作曲科卒業。作曲を三善晃、ピアノを末光勝世、森安耀子各氏に師事。武満徹主宰<Music Today '82>国際作曲コンクール第1位。88年、村松賞受賞。2009年、サントリー芸術財団主催で「作曲家の個展2009-中川俊郎」が開催され、その成果に対して、第28回中島健蔵音楽賞受賞。CM音楽界においても受賞多数。また05年にTrp.曽我部清典、Bar.松平敬とともに結成した「双子座三重奏団」の活動も近年注目されている。現在、日本現代音楽協会副会長、日本作曲家協議会常務理事、お茶の水女子大学非常勤講師。
メッセージ
大阪初演から4年を経て、今回の再演を好機とし、改訂した。曲中一回だけ会場内に再生される「犬の泣き声」の位置が、どうもしっくりいかなく、あちこち動かしてみたのだが、その作業だけに何ヵ月も悩まされたあげく、結局もとに戻すことにした。しかし、この試行錯誤のおかげで、構成を吟味し直すことが出来、第1楽章にはっきり「主題」と言える主題が登場することになった。 だから回り道や無駄ということはない。どんなことにでも。
伊左治 直
現代音楽系の作曲、パフォーマンスや即興演奏から、ブラジル音楽や昭和歌謡曲などのライブまで、様々な活動を展開している。また、ラテン系サッカーや映画、日本史、時代劇、民俗学の愛好家でもあり、それらの興味は作曲へ強く影響を与えている。これまで芥川作曲賞、出光音楽賞等を受賞。作品集CDに『熱風サウダージ劇場』(FOCD2565)がある。
なお、頻繁に間違えられるが、「伊佐治」や「伊左地」でなく「伊左治」が正確な表記である。
メッセージ
2012年のTRANSMUSICは、私自身のパフォーマンスやパンデイロの演奏(畏れ多くも鈴木大介さんのギターと野平一郎さんのトイピアノとの共演)、更には碇山典子さんの関西弁弾き語り、司会者の岡田暁生さんのジャズピアノ演奏なども含めた「伊左治ワールド」全開の一夜でした。今回の協奏曲は、それら全体のコーダとして書かれたものです。
野平一郎 (指揮・作曲)
東京藝術大学、同大学院修士課程作曲科を修了後、パリ国立高等音楽院に学ぶ。ピアニストとして内外のオーケストラにソリストとして出演する一方、多くの名手たちと共演し室内楽奏者としても活躍。作曲家としては既に80曲以上に及ぶ作品を発表。近年ではシュレスヴィッヒ・ホルシュタイン音楽祭で初演されたオペラ《マドルガーダ》、パリのIRCAMで初演されたサクソフォンとコンピュータのための《息の道》などが作曲されている。最近では積極的に指揮活動にも取り組んでいる。第44・61回尾高賞、第35回サントリー音楽賞、第55回芸術選奨文部科学大臣賞ほかを受賞。2012年春、紫綬褒章を受章。現在、東京藝術大学作曲科教授、静岡音楽館AOI芸術監督。
メッセージ
まったくスタイルも思想も異なる5人が、通常は演奏するのがとても難しくプロ以外は手も足も出ないと思われている作品に、何とか「しろうとでも弾ける(吹ける)」「家に持ち帰って弾ける(吹ける)」「やさしい」部分を作ろうとしたのがこの5作品です。それぞれの作曲家の特徴が100%出ていると同時に、この「やさしい内包曲」を別に演奏して、各作曲家の秘密に迫るのが面白い!!
わたしは第3回目からこの大阪発のコンサート・シリーズに、指揮者として参加させてもらいましたが、毎年がとても楽しみで仕方がありませんでした。さらに今回西村さんと中川さんの作品を含めて、このシリーズの全5作品を東京の皆さんに一挙にお聴きいただけるのは、大変興味深く、とても気が引き締まる挑戦です。
三輪眞弘
1958年東京に生まれる。国立ベルリン芸術大学及び国立ロベルト・シューマン音楽大学で作曲を学ぶ。80年代後半からコンピュータを用いたアルゴリズミック・コンポジションと呼ばれる手法で数多くの作品を発表。89年第10回入野賞第1位、2004年芥川作曲賞、07年プリ・アルスエレクトロニカでグランプリ(ゴールデン・ニカ)、10年芸術選奨文部科学大臣賞などを受賞。近著『三輪眞弘音楽藝術 全思考一九九八ー二〇一〇』をはじめ、CD『村松ギヤ(春の祭典)』や楽譜出版など多数。旧『方法主義』同人。「フォルマント兄弟」の兄。IAMAS(情報科学芸術大学院大学)教授。
メッセージ
岡野勇仁がフォルマント兄弟の発話・歌唱システムを操り、誰のものでもない声で『海ゆかば』を唱える。その時、東京シンフォニエッタは「伴奏」をするのだろうか。ソリストがいてアンサンブルがあり、音楽家たちが力を合わせ、同じ時空を共有しながら「ひとつの音楽」を奏でる。・・普通はそうだ。「音楽」の魅力、喜びとはそういうものだったはずだ。年老いたぼくの父母二人共が当時『海ゆかば』を学校で何度も歌ったと話していた。そのような歴史を思い起こさずにはいられない今、ぼくらは同じことを繰り返すしかないのだろうか。・・そう思いつめ、ぼくはアンサンブルの音楽家が「力を合わせ」たり「心をひとつに」したり「しない」ことを考えた。
碇山典子(ピアノ)
神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒業。同研究生修了後、パリ・エコール・ノルマル音楽院ピアノ科、室内楽科卒業。J.ルヴィエ、M.リビツキ、J.ファッシナの各氏他に師事。フレンチ・スタイルを身につけると共に、現代音楽奏法を学ぶ。バロックから近現代まで幅広いレパートリーを誇り、特に現代音楽では、楽曲理解と超絶技巧で、第一線の作曲家たちから厚い信頼を寄せられている。「いずみシンフォニエッタ大阪」には創設時から参加して異才を放ち、数多くの新作初演に貢献。05年『オパール光のソナタ/碇山典子プレイズ西村朗』、13年までに『プーランク:ピアノのための作品集I、II、III』(いずれもカメラータ)をリリース。第35回ブルーメール賞受賞。
鈴木大介(ギター)
作曲家の武満徹から「今までに聴いたことがないようなギタリスト」と評されて以後、新しい世代の音楽家として常に注目され続けている。マリア・カナルス国際コンクール第3位、アレッサンドリア市国際ギター・コンクール優勝など数々のコンクールで受賞。斬新なレパートリーと新鮮な解釈によるアルバム制作は高い評価を受け、『カタロニア讃歌~鳥の歌/禁じられた遊び~』は平成17年度芸術祭優秀賞を受賞。平成17年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、第10回出光音楽賞受賞。洗足学園音楽大学客員教授。横浜生まれ。
井上麻子(サクソフォン)
大阪音楽大学を卒業後、フランス国立パリ高等音楽院サクソフォン科を審査員全員一致の首席で修了。2000年より2年間、文化庁派遣芸術家在外研修員として奨学金を授与される。兵庫県芸術奨励賞、サントリー芸術財団「佐治敬三賞」、神戸灘ライオンズクラブ音楽賞等を受賞。台湾、フランスの国際サクソフォンコンクール、また日本各地の吹奏楽コンクール等の審査員を務める。パリ国立高等音楽院サクソフォン科入学試験審査員。現在、大阪音楽大学、ESA音楽学院講師。井上麻子×藤井快哉DUOでCD『Prelude』を発売中。
岡野勇仁(MIDIアコーディオン)
リサイタルのほか、南米音楽演奏、美術家や詩人、映画音楽、紙芝居、フリーインプロヴィゼーション、クラブミュージックやエレクトロニクス、アートプロジェクト、日本やアジアの歌の演奏など類例をみない多彩な活動をおこなう。深川芸術祭主宰。フォルマント兄弟の合成音声歌唱作品をMIDIアコーディオンやMIDIキーボードで演奏している世界でも唯一の演奏家。フランス音楽コンクール第2位、第9回日本室内楽コンクール入選、現代音楽コンクール《競楽4》入選。東京音楽大学ピアノ科卒業。尚美ミュージックカレッジ専門学校ピアノ学科講師。
東京シンフォニエッタ(室内アンサンブル)
1994年、同時代の音楽の優れた演奏と、現役の作曲家達の創作と直接関わることを目的として設立。東京での定期公演や国内外の主要な現代音楽祭にも出演した。2012年ラジオ・フランスより招聘を受け、国籍も美学も異なる活躍中の作曲家の作品を紹介する。これまでに140名を超える現代作曲家の作品を取り上げ、世代の異なる16名の作曲家へ委嘱し、世界・日本初演を行う。10年「第28回定期演奏会-湯浅譲二特集」にて第10回佐治敬三賞、13年CD『東京シンフォニエッタ・プレイズ西村朗‐2/天女散花』にてレコード・アカデミー賞現代曲部門を受賞。