旬を迎えたペコリーノ・トスカーノ・フレスコとヴォロロッソ キャンティの同郷マリアージュ
新緑が深まるこの時期、今回はちょうど食べ頃の旬を迎えるイタリアのトスカーナ州名産の「ペコリーノ・トスカーノ」をご紹介しましょう。イタリア語では、羊のことを「ペーコラ」といい、羊の乳から造るチーズを「ペコリーノ」と呼びます。
イタリアではこの「ペコリーノ・トスカーノ」が造られるトスカーナ州から南の地域はやや乾燥した気候のため牛が飼いにくく、羊がよく飼われることから、地方ごとに「ペコリーノ」が造られています。ローマ時代からローマ近郊で造られる「ペコリーノ・ロマーノ」、シチリア島で造れば「ペコリーノ・シチリアーノ」、羊飼いの島として知られるサルデーニャ島で造れば「ペコリーノ・サルド」というように様々なペコリーノが生産されていますが、そのなかでも今回の「ペコリーノ・トスカーノ」は塩味も比較的優しい風味で人気がある「ペコリーノ」です。
トスカーナ州の名前の由来は、かつてこの地にエトルリア人が住んだことからと言われます。エトルリア人はこの地にチーズ造りをもたらしたと言いますから、まさに3000年のチーズの歴史があるといえます。エトルリア人たちは、イタリアの大地のどこに葡萄の木を植えてもよく育ち、ワインが生まれるということから、このイタリアの大地のことを「エノトリアーテルス」とも呼んだのでした。
そんなワインもチーズも歴史あるイタリアのトスカーナ地方を代表する羊乳製チーズが「ペコリーノ・トスカーノ」です。約1~3.5kg程の円筒形をしており、このチーズは熟成別に楽しまれています。1か月ほどで食べる熟成が若い「フレスコ」、3か月ほど熟成が進んだタイプを「スタジオナート」、そして6か月ほど熟成した「オーロ・アンティコ」があります。その中でも今回は、熟成が若いタイプの「フレスコ」を選んでみました。というのも春に芽吹いてきた牧草を食んだ良質な羊の乳から造られ、1か月ほどの熟成期間を経て、ちょうど今食べ頃を迎えているからです。
「ペコリーノ・トスカーノ・フレスコ」の生地はやや白っぽく、しなやかさとむっちりとした弾力があります。塩味が優しく、脂肪分がやや高い羊乳からくるコクと、独特の甘い香りが口いっぱいに広がります。