ぶどうは生育していく中で光合成の働きにより、大気中の二酸化炭素を取り込んでいます。取り込まれた二酸化炭素は枝や葉、ぶどうの実などに変えられていきます。特にぶどうの剪定枝には多くの炭素が蓄積されていますが、そのままの状態ではすぐに土壌の中で分解され、大気中に放出されてしまいます。より長く、より多くの炭素を土壌中にとどめさせるために、剪定枝を専用の道具を使い炭の状態にして土壌に戻しています。非常に手間はかかりますが、農業の分野でできる温暖化対策だと考えています。
また、登美の丘ワイナリーではぶどう畑に下草を生やした状態で栽培する草生栽培を長く続けています。この草生栽培は土壌の排水性や物理性の向上、微生物などの土壌多様性向上のために行っていますが、大気中の二酸化炭素を土壌の中にとどめさせる方法でもあります。
草生栽培を行いながらぶどうを作り上げるには、除草作業を行う必要があります。ぶどうが健全に生育するために、害を及ぼす虫の住処を少なくしたり、風通しを良くしたりするためです。これまでその除草作業には化石燃料をエネルギーとした機械が使用されてきました。肩掛けの草刈り機など小型なものから、トラクターなどの大型なものまで様々な除草機械を使っていました。地球温暖化を考えた中で、私たちも温室効果ガスの排出をより抑える技術の導入を行いたいと考えています。その一つが太陽光発電を利用したエネルギー取得です。特に日照時間の長い山梨県では有用な技術だと考えています。現在、ぶどう畑では試験的に太陽光発電を利用した除草機械を稼働させています。
剪定枝の炭化や草生栽培、太陽光発電によるエネルギー取得などにより、地球環境に影響の少ない技術を用いてぶどうを栽培することで、これからもこの土地で持続可能なワインづくりを行っていきたいと考えています。
今、登美の丘ワイナリーでは一部の品種でぶどうが色着き始めました。収穫まであと少し暑い夏を乗り越えていきたいと思います。