栽培担当の潮上です。
例年になく厳しい寒さとなっている今年の冬、朝晩の寒さはまだまだ厳しいものの日中は防寒着が必要ない日も少しずつ増えてきています。また立春の頃からか畑の日当たりの良い場所にはホトケノザやオオヌノフグリなどの草花も見かけるようになり、寒さの中にも春の兆しを感じる季節となってきました。
冷え込みの厳しい朝の畑
2月10日にはかなりの積雪がありました
この時期、昨年末より進めてきた剪定作業もようやく目途がついてきました。この後は結果母枝を誘引する作業や垣根や棚設備の修繕、更には春の苗植えの準備など、冬から春にかけては今年のぶどうの出来を左右すると同時に、将来の畑の基礎をつくる大切な作業が絶え間なく続いていきます。
今回はその畑の基礎となるぶどう樹の苗に関するお話しをしたいと思います。
ぶどうを始めとする果樹は一般的に種子から苗をつくるのではなく、親となる樹から枝を採取し、それを台木品種に接ぎ木して増殖させていくという方法をとります。親と子の顔かたちが違うように、果樹も果実(親)とその種子(子)は違う個体であり、そこから生まれる果実の形態や品質も違う為、栽培者が望む安定した果実を得る為には同じ遺伝形質を持つ“個体=クローン”から枝を採取し、増殖させていくことが必要になります。
植付けをした苗
ワイン生産の盛んな国ではぶどう品種毎に優良クローンを選抜し認定している公的な機関があり、記号やナンバーをつけて管理されています。またそれを苗木業者がクローン苗として販売もしています。日本でも甲州を中心にワイン用ぶどう品種のクローン選抜や認定をする動きがありますがまだまだ限定的であり、生産者が望むクローン苗を指定して買うことは一部の信頼できる苗木業者を除き難しいのが現状です。
そういった理由から私たちが苗を入手し植えて行く際には、そのような苗木業者から“クローン苗”を購入することに加え、自園で過去に植付した“クローン樹”を母樹とし枝を採取して苗をつくっていく方法が一般的です。
そのようなクローン苗は高い品質レベルが獲得し易いことと、ぶどうの成熟が揃うというメリットがあります。しかし一方では、単一クローンまたは数クローンのみからワインをつくることで味わいに複雑性が生まれにくくなる原因ともなります。理想的には私達の畑の中からある程度の幅の中で果実品質が優良かつ成熟の揃う樹を残し、品質の劣る樹を伐採していくことで、品質レベルを徐々に上げながらぶどう樹の多様性を維持していくことが重要だと思っています。またそれが最終的なワイン品質全体の向上に繋がっていくと考えています。更にその“多様性のあるぶどう畑”から複数の優良クローンを私達自身で選抜し、苗をつくり植えていくことで、登美の丘でしか生まれない味わいのワインを継続的につくっていく基礎となっていくのではと考えています。
ぶどうが萌芽し生育していくのはもう少し先ですが、今年も、ぶどう樹のわずかな変化も見逃さない目を持ちながら、“登美の丘らしさ”を更に追求していく為に日々彼らと向き合っていきます。
剪定作業もまだ続きます
畑の傍らには春の訪れが…
今年も萌芽の時期が待ち遠しい(画像は2021年の様子)
~ワイナリーからのお知らせ~
2022年1月~当面の間、場内施設メンテナンスに伴い場内全施設の営業を休止しております。
営業再開につきましては、当社ホームページでお知らせ致します。