サントリー ワイン スクエア

登美の丘ワイナリー通信

ワインづくりの現場から

ぶどうづくり

2021年 収穫真っ只中

こんにちは、登美の丘ワイナリーでぶどう栽培を担当している大山弘平です。
今年は8月中旬にまとまった雨が降ったため品質の低下や病気が心配されましたが、その後9月に入り晴れた日が多く雨が少なくなりました。また、夜の温度が平年より下回る日が続くことで、二次代謝物と呼ばれるぶどうの香りや色などが多く生成される条件が揃ったため、健全で良質なぶどうを収穫することが出来ております。
登美の丘ワイナリーの収穫は8月下旬のリースリング・フォルテからスタートし、9月から10月にかけて主要な品種は次のような順番で進んでいく予定です。
 
リースリング・フォルテ(白)→シャルドネ(白)→メルロ(赤)→
甲州(白)→プティ・ヴェルド(赤)→カベルネ・ソーヴィニョン(赤)
 
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完熟を迎えたシャルドネ
 
「良いワインはよいぶどうから」と言われる中、そのぶどうの収穫タイミングの判断はワインづくりにおいて最も重要な仕事の1つと言えます。普段、私たちは栽培チーム、中味設計チーム、製造(醸造)チームと分かれて仕事をしていますが、収穫タイミングの判断については必ず全員で行います。
収穫日を決めるための材料はサンプリングを行ったぶどうの糖や酸の「分析値」、今後10日間の「予想天気」、収穫や仕込・選果の「要員と設備の準備状況」、その他様々なことを確認しますが、最終的な決め手となるのが「ぶどうの味わい」です。
 
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メルロの食味確認
 
皆で収穫時期が近づいている畑をくまなく周り、ひたすらぶどうを食べ続けます。甘さと酸味のバランス、アロマの質と量、皮の渋さ・香り、種の成熟度などのそれぞれの要素が狙いのワインを造るために必要な基準を満たしているかを確認し、収穫のその日を決めることになります。 
私はいつもノートに感じたことのメモを取り、同じ品種でも隣の列や他の区画と比べてどうか、先週や数日前と比べてどうか、去年の同時期と比べてどうか、などを比較出来るようにしています。
 
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区画毎のぶどうの食味を記す畑ノート
 
天候や土壌などぶどうの品質に影響する因子は非常に多く、各々が日々変化を続けています。その中で良いぶどうを収穫するために、毎日畑に足を運び生育の状態を確認する労力を惜しまないことを心掛けています。そして自分たちの判断が常に正しいとは限らないことも意識し、少しでも今年の判断をより良いものにすると共に、来年やそれ以降にも繋げられればと考えています。
 
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畑一面に実る甲州
 
登美の丘には40年を超える樹齢の甲州の樹があります。この畑に来て自分よりも年上の樹を見ると、過去にここで収穫されたぶどうや造られたワイン、そして携わった先輩たちのことを考えます。ワインづくりは1年に1回と捉えられがちですが、それは収穫や醸造という分かりやすい一部分を切り抜いているからかもしれません。ぶどうの生育は前年の天気や管理方法が翌年やそれ以降に影響するように、全ての現象が切れ目なく連続的に繋がっていますし、出来上がったワインの熟成も半永久的に続いていきます。
ワインは、その年(ヴィンテージ)の特徴を楽しみながら、ぶどうの樹が過ごしてきた時間の経過を感じることが出来る飲み物なのかもしれません。
 

<お薦めワイン>登美の丘ワイナリーを代表するワイン 登美〈赤〉2016

登美の丘ワイナリーのフラッグシップワイン。徹底した収量制限により育てられたカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ等を絶妙にブレンドした、樽香と果実香のバランスがよく、気品を感じる逸品です。
 

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