登美の丘ワイナリーでは醸造したワインの評価を幾度となく実施いたします。その代表的な取り組みのひとつが「新酒評価会」です。
新酒の評価はその年に醸造したワインを品種別、産地別、農家別に貯蔵しているタンクより抜き出し、テイスティングをして行います。
香味を共有し、お互いの意見をぶつけあいながら、これからのぶどう栽培、ワイン醸造のヒントに直結させる非常に大切な評価会です。
「2017年 新酒評価会」は登美の丘ワイナリーの渡辺所長、近保技師長を始め栽培、品質、製造の各グループのメンバー、塩尻ワイナリー、岩の原葡萄園、生産研究本部やマーケティング部門などサントリーの日本ワインに関わる関係者が一堂に会して、昨年12月に実施されました。
当日は登美の丘ワイナリー、塩尻ワイナリー、岩の原葡萄園から100種以上におよぶ原酒が準備され、午前中に約2時間以上かけて全てのサンプルのテイスティングをした後、ワインの評価と今後の商品化に向けたディスカッションを行いました。
テイスティングは
「外観:清澄度」
「香り:健全さ・強さ・質」
「味わい:健全さ・強さ・持続性・質」そしてそれらの
「ハーモニー」の項目ごとに合計20点満点で評価します。現時点での評価と熟成後のポテンシャルも見据えながらの評価となります。
各自のテイスティングが終了した後、いよいよディスカッションへと移ります。
皆の意見を熱心に聞く品質担当の吉野、遠藤 |
塩尻ワイナリーの篠田所長からは、塩尻産の作柄と醸造についての説明がされました |
≪2017年の山梨県の作柄状況≫
1~3月まで平均気温及び平均最低気温は平年より高く推移しました。一方で1~3月中旬の累積降水量は平年の61%という少なさであったため、シャルドネの萌芽は昨年より約1週間遅くなりましたが5月の平均気温は平年より高く推移し、ぶどうの成長が追いついてきました。
梅雨入りは6月7日で平年より1日早く、梅雨明けも7月6日で平年より15日早かったため期間としては平年より短く降水量も平年の約7割と少なく、そのため目立った病気もなくぶどうも順調に生育しました。
8月の平均気温は平年より少し高めに推移しましたが、8月上中旬の平均最高気温が低く、またヴェレゾン前後の最低気温は2016年よりもやや高い傾向となりました。7月下旬から8月中旬にかけての有効日照時間は110時間で平年の52%しかなかったため赤系品種の着色にやや影響が見られました。
9月に入ると好天が続き、上旬前半は最低気温が下がり、糖度上昇中の白系品種とくにシャルドネに好影響をあたえ、酸がありかつ豊かな香りのあるぶどうを収穫できました。9月は163h/月と日照があり、かつ降雨量が95mm(平年比50%)と少なく、ぶどうの健全性と糖度上昇は確実に得られ、完熟を待って赤系品種の収穫ができました。
登美の丘ワイナリーの甲州ぶどうの様子 2017年10月ごろ撮影 |
上記のような気候条件で収穫したぶどうに対し各ワイナリーでは様々な取り組みをしていましたので、それらの取り組みが実際のワインの味わいとして品質向上に役立ったのかどうかを、全員で議論しました。
例えば醸造面では搾汁方法が正しかったのか、使用した酵母がぶどうと合っていたのかなど・・・
求めるワインのイメージと現実との差異に対しては、どのポイントが違っていたのか、現場改善でできることはなかったのか、議論と追求を重ね今後のワインづくりに活かしていきます。
常に品質を磨いていくことができるのは、自らの手で畑の土づくりからぶどう栽培・醸造・熟成まで一貫したワインづくりを行なうことのできるサントリーの日本ワインのひとつの大きな強みだと思っています。
各ワイナリーに与えられた土地の風土と寄り添い、生かし、品種を通して、土地の特長を表現していく、そんなワインづくりを目指しています。
私たちが目標とする「緻密で、凝縮感があり、しなやかな強さとやさしさ、繊細さを持つ」ワインを、もっともっと皆様に愉しんでいただけますよう、これからもぶどうづくり、ワインづくりに邁進して参ります。