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登美の丘ワイナリー通信

ワインづくりの現場から

世界との交流

造り手たちのワイン談義 Vol.3(最終回)「ラグランジュと登美の丘、味わいの裏側を語る。」

【特別対談】

椎名敬一(シャトー・ラグランジュ 副会長)

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渡辺直樹(サントリー登美の丘ワイナリー ワイナリー長)

 

 

椎名氏と渡辺氏による対談第3弾はテイスティング対決。

土地の特性、年ごとの気候など、造り手ならではの視点からワインを語ります。

味わいとその周辺を巡る対話の背後からワインへの思いが溢れます。

 

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左:シャトー・ラグランジュ副会長 椎名敬一

右:登美の丘ワイナリー所長 渡辺直樹

 

 

●<登美の丘 甲州 2015>

 

椎名:柑橘のような、柔らかく品のある感じで、酸もいいバランスですね。

 

渡辺:この年は天気にも恵まれました。よく熟したところを収穫し、丸ごとゆっくり絞ってシュール・リーで半年間熟した甲州からいかに良さを引き出すかを考えた結果です。

 

椎名:なるほど、これは美味しい。甲州も面白いですね。

 

渡辺:今後、より凝縮した甲州を収穫して長期熟成のスタイルにもチャレンジしようかと思っています。

 

椎名:それは楽しみです。

 

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<登美の丘 甲州 2015>

 

 

 

●<ジャパンプレミアム 甲州 2015>

 

渡辺:登美の丘周辺と南アルプス地域で収穫したやや早摘みの葡萄で仕込みました。カボスのような香りがしませんか?

 

椎名:柑橘の香りもしっかり残っている。以前の<ジャパンプレミアム甲州>に比べてぐんとバランスが良くなっていますね。

 

渡辺:シュール・リーが効いているからでしょうね。フレッシュさがとても長く続くようで、大きな特長になっています。甲州の基本的なスタイルのひとつになると考えています。

 

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<ジャパンプレミアム 甲州 2015>

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●シャトー・ラグランジュ <レ・フルール・デュ・ラック 2014>

 

椎名:ラグランジュの白のセカンドワインです。

 

渡辺:アカシアやオレンジの甘い花の香りが。口当たりはフレッシュで甘さもある。

 

椎名:樹齢が若い樹を主体に、プレスワインでバランスをとりました。

 

渡辺:コクもあって、中盤からフィニッシュにかけて少しタンニンの強さが来るのも特長ですね。

 

椎名:この年からソーヴィニヨン系の比率を増やし、きりっと酸が通るスタイルにしています。

 

渡辺:強さがあって骨格もある。美味しいワインですね。

 

 

 

●シャトー・ラグランジュ <レ・ザルム・ド・ラグランジュ 2014>

 

渡辺:ソーヴィニヨン・ブランらしいグレープフルーツ系の甘い香りですね。

 

椎名:この年はしっかり完熟させて収穫したので、酸の透明感や柑橘系の香りがフレッシュなトーンになりました。エレガントさを大切にしたつくりです。

 

渡辺:生き生きとしながら、最後に骨格がある。

ちょっと甲州にも似ているかな。

 

椎名:バトナージュしながら8カ月樽発酵させたので、シュール・リーした甲州と共通するニュアンスが出たんでしょう。

 

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<レ・ザルム・ド・ラグランジュ 2014>

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●シャトー・ラグランジュ <レ・フルール・デュ・ラック 2013>

 

渡辺:14年よりアカシアの花の香りが強いですね。色も濃い。

 

椎名:雨が強くて貴腐化したので、それが少し混じった影響もありますね。

ミュスカデルとセミヨンの比率が少し高いので、マスカットのような柔らかさも出ています。

 

渡辺:フローラルですね。

 

椎名:最後にグリップが効いた感じ。ごく軽いタンニンが特長です。

 

渡辺:口当たりがフレッシュで柔らかくて甘さがあって。中盤からフィニッシュにかけてのバランスがぐっときますね。

 

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<レ・フルール・デュ・ラック 2013>

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●シャトー・ラグランジュ <ル・オーメドック・ド・ラグランジュ 2013>

 

椎名:13年は過去30年間でいちばん難しい年でした。雨が多く、開花が平年より3週間ほど遅くて葡萄が熟す期間が短くて。苦労して収穫しました。

 

渡辺:レッドカレントのような酸味、デーツのような甘い香り。

口に含んだ瞬間にカベルネが来て、そのあと強い骨格が来るという感じ。

 

椎名:厳しい年だったから逆にカベルネが70%だとは感じさせないくらい
アタック感があるし、キレの良さがあると思います。

 

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<ル・オーメドック・ド・ラグランジュ 2013>

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●<登美の丘 赤 2013>

 

渡辺:13年は山梨としてはドライシーズンでした。

 

椎名:いい色をしている。奥にいくほど柔らかいのはメルロが多いせいかな?

 

渡辺:というよりはこの土地の特徴ですね。少々抽出を強くして甘さも強さもあるワインに仕上げました。

 

椎名:完全にボルドースタイルですね。

 

渡辺:たぶんすき焼きのような甘みのある料理に合うと思います。

 

渡辺:たぶんすき焼きのような甘みのある料理に合うと思います。

オーメドックなら脂ののったステーキが美味しいけれど。

 

椎名:秀逸な出来だと思います。

 

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<登美の丘 赤 2013>

 

 

 

●シャトー・ラグランジュ <シャトー・ラグランジュ 2013>

 

椎名:カベルネをメインにメルロ、さらにプチヴェルドを少々。

 

渡辺:ナッツのようなニュアンスがありますね。

 

椎名:赤果実系の華やかさとトースティなニュアンスのバランスで、全体としてはとても上品に仕上げました。

 

渡辺:口に入れた瞬間に柔らかくて甘さがあって、フィニッシュにかけても柔らかな骨格を感じます。甘さと酸味と旨味のバランスがすごくいい。とても工夫されていることがわかります。

 

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<シャトー・ラグランジュ 2013>

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●<登美 赤 2012>

 

渡辺:ドライシーズンでした。葡萄がフルーツ感を残しながら熟した葡萄を14カ月樽で熟成させました。長熟タイプです。チャーミングだけれど長く持つタイプの年でしたね。

 

椎名:強そうな色味ですね。13年もよかったけれど、タンニンの質や強さがこちらは更にいい。

 

渡辺:アタックが柔らかくて凝縮感があるでしょう? 

 

椎名:日本のワインでこれだけ強さが出るとは。もう少し寝かせればもっと美味しくなりそうですね。

 

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<登美 赤 2012>

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●シャトー・ラグランジュ <シャトー・ラグランジュ 2011>

 

椎名:この年は春が早くて葡萄が良く熟したのですが、9月の雨や嵐で早めに収穫することになりました。それでも葡萄はしっかり完熟して、美味しく飲めるヴィンテージです。

 

渡辺:13年に比べると圧倒的に黒果実系フルーツのニュアンスが際立っています。少し色も濃い。

 

椎名:葡萄の熟した感じがある濃さでしょう?

 

渡辺:コーヒーを煎ったような香りも。アタックが柔らかくて、少し酸味があって、中盤にはボリューム感もある。

 

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<シャトー・ラグランジュ 2011>

 

 

 

●<登美 赤 2011>

 

渡辺:2011年は非常に苦労の多かった年でした。温度が低くて、8月末が大雨で9月下旬もかなりの降水量で気温が下がって葡萄が晩腐病にかかってしまい、ものすごく時間をかけて選果しながら収穫しました。香りがよくて少し甘いようなイメージだけれど、強さはあると思います。

 

椎名:甘くて全体がふくよかな感じ。今飲むにはちょうどいい。

 

渡辺:飲み頃を見極めるのも大事ですよね。黒系果実系の甘い香りがあって、口当たりもいいでしょう?

 

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<登美 赤 2011>

 

 

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今回テイスティングをしたワイン

 

 

●テイスティングを終えて。

 

椎名:登美の丘ワイナリーは着実にいい歩みを進めていると感じました。たとえば<登美>ではなにを訴えていくのかとか。存在意義も含めて構想を打ち出して、世界でも「登美の丘はすごい」と見られるようなものができると思います。ぜひそういうワイナリーになってほしい。

 

渡辺:ラグランジュの白ワインは、赤ワインの造り手が持ついいイメージが反映されているような味わいでした。骨格を作りにいっているワインだと感じたし、それこそがボルドーの面白さだし個性なのだと改めて実感しました。土地や造り手の特徴が際立てば、やはり大きな価値になるし、それこそが我々の目指すべき姿だと思います。

 

椎名:ワインは一つひとつにストーリーがあるのも面白さだし。

 

渡辺:土地や造り手の情報など、情報がまた味わいになりますよね。こういう機会をまたぜひ。ありがとうございました。

 

椎名:こちらこそ。

 

 

造り手たちのワイン談義 Vol.1「登美に息づくボルドーの技」

造り手たちのワイン談義 Vol.2「味わいの原点は風土の力」

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