2016年12月14日、サントリーの日本ワインを評価する新酒評価会が開催されました。
登美の丘ワイナリー・塩尻ワイナリー・岩の原葡萄園のそれぞれのワイナリーから90種類以上におよぶワインのテイスティング、原酒となるワインの評価及び今後の商品化に向けたディスカッションを行いました。
テイスティング方法は 「外観 清澄度」「香り 健全さ・強さ・質」「味わい 健全さ・強さ・持続性・質」「ハーモニー」の項目、計20満点で評価します。
一般のコンクールなどの評価方法と同じ採点の仕方ではありますが、コンクールの評価とは違い、現段階での評価だけではなく、今後の熟成やどういった商品にしていくかなども考慮しながらの評価を実施します。
2016年の作柄状況として、8月までは日照時間も多くまた降水量も少なく経過していたため良いコンディションになるのではないかと期待をしていたのですが、ご存知の通り9月に入ると台風が立て続けに差し掛かったことや、長く続いた秋雨の影響でブドウにとっては厳しい状況となりました。
もちろんそのような状況は山梨だけではなく長野、新潟、山形など日本各地でも同じでした。
ただ、ブドウは農産物ですので当然、毎年同じ品質のものが収穫されるわけではありませんし、工業製品のように他の場所から原料を仕入れることもできません。天候に恵まれ濃厚なワインができる年もあれば、軽やかな味わいの年もあります。
ワインの価値から見れば、毎年同じような味わいであるよりも、土地の個性が感じられる範囲で、各収穫の違いがあることは自然です。
よい年と難しい年があっても、各収穫年の個性をワインに表現することが、つくり手にとっての使命だと思います。
各自のテイスティングが終わったところでディスカッションに移ります。
進め方は、まず各ワイナリーで行った取り組みが発表され、その後ワインに対する意見交換が行われます。
前述の通り2016年はブドウにとって厳しい年となりました。
そういった中でそのブドウを受けて仕込みを行う醸造面では各ワイナリーが品質向上のため様々な取り組みを行い、その取り組みが狙いのワインスタイルと合致していたのかが議論されました。
白ワインの評価については、特にどのようなタイミングで収穫を行い、搾汁時にはどういったプレス方法を用いたのか、また使用した酵母がブドウに合っていたのか等を重点的に議論します。特に白ワインは繊細ですので、工程の1つが違うと、狙いのスタイルにはなりません。
醗酵させる品種ごとの新しい酵母の効果や、タンク醗酵と樽醗酵といった醗酵方法によっての効果の有無等、さまざまな切り口での議論がなされました。
また新たに使用した酵母そのものの議論もなされ、適切な醗酵管理をしていたのか等までを評価し、細かい部分まで丁寧にディスカッションをしました。
このように今後の商品化及びワインつくりに落とし込んでいきます。
また、赤ワインの評価においては、現段階での品質の評価に加えて、この後に樽熟成を行なうことによる香味の変化や熟成を考慮した熱い議論が交わされました。
醗酵が終わったばかりの赤ワインはタンニンが荒々しく、渋みに柔らかさがありません。樽やタンクで熟成させることにより優しい味わいに変化していくのか、どのように変化していくかは教科書には載っているものではないので、大変難しい判断となります。
各ワイナリー、各人、さまざまな意見を出しあい共有できたことは、お互いの今後のつくりに良い参考となりました。
2016年に仕込んだ白ワイン、赤ワインは共に品種の個性、産地の特性が豊かに表現されたワインに仕上がりました。
この後、それぞれのワインの長所を引き出すことを目的とするアッサンブラージュを行い、最適なタイミングを見極めて瓶詰め・発売するのも重要な作業です。お客様の元へ届くまで適正な管理が必要となるため、気の抜けない日々が続きます。
渡辺所長をはじめ、私たちはサントリーの日本ワインが目標とする「優しさ、柔らかさ、繊細さを持ち、緻密で凝縮感のあるワイン」をつくるために、こういった議論を重ね、切磋琢磨しあい、試行錯誤を重ねて更なるチャレンジをしていくことが必要だと考えております。
これからもお客さまにもっと美味しいワインを届けられるよう努力してまいります。