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登美の丘ワイナリー通信

ワインづくりの現場から

ワインづくり

今、樽熟庫では「樽空け作業」も盛んに行なっています。

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現在、登美の丘ワイナリーの樽熟庫では、樽詰め作業と並行して樽空け作業も精力的に行なっています。

この日の樽空け対象の樽は「ジャパンプレミアム マスカット・ベーリーA(赤)2014」になるものです。

約1年の樽熟成を行なった後のマスカット・ベーリーAのワインは、熟成期間中にゆっくりと沈んだ不溶性の成分がオリとして沈殿しているのでその上澄み部分のワインを取り出す作業です。

 

樽の中に金属製のノズルを差込み、別のチューブから樽の内部に上から空気を送りこんで、その圧力でワインがノズルを通ってホースを介し、別の約1KLの小容量タンクへと移送されるという仕組みです。

そのノズルの途中には透明のガラス管の部分があり、ライトを後方から照らすようにしてみることにより、通過しているワインの透明度を確認できるようになっています。

上澄み部分のワインが全て移動して下のオリの部分が出てくる段になれば、ガラス管を通過するワインの色が濁って瞬時に確認することができますので、すぐに移送作業をストップするというわけです。

 

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ひとつひとつの樽の状態によってオリの状態は異なり、ワインの移送をストップするタイミングは違うので、しっかり見ていないとオリまで送ってしまうことになりかねませんので、気が抜けない作業です。

薄暗く寒い樽熟庫の中で醸造スタッフの吐く息がライティングの光で白くくゆる様子も静寂の中に見え、赤いガラス管をじっと見つめるスタッフの後ろ姿の張りつめた緊張感が樽熟庫を支配します。

 

そして、無事に上澄みのワインを移送が完了したら、樽の中で圧力がかかっている空気をバルブを開けて開放してあげます。

プシューッという樽から空気が排出される音がしばらく続いた後、再び樽熟庫は静寂に包まれます。

 

何丁かの樽を空けて、小型タンクがある程度の容量になれば、常設しているタンクがある下の醸造エリアに運んであげます。

先日の樽詰め作業の時は、醸造エリアの下から上にフォークリフトで小型タンクを持ってきて、樽熟庫の中で小型タンクをフォークリフトで持ち上げて重力を利用して樽詰め作業を行なう様子をレポートしましたが、フォークリフト2台を使っているのが気になってたずねてみると「樽熟庫の中の空気をフォークリフトの排気ガスで汚したくないから、樽熟庫の中では電動のフォークリフトを使って、ワインに気づかってあげてるんだよ」と醸造スタッフは、にっこりと笑ってくれました。

 

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また、1日に何丁もの樽空け作業を行ないますから、その樽を洗浄するのもたいへんです。

オリが入ったままの樽は、樽熟庫の入り口に運ばれて、樽の洗浄機のノズルを樽の穴に差し込むようにしてセットされます。

そうすると、樽に入っていたオリがどろどろと流れ出してきますが、これは場内の排水処理の浄化槽へときちんと送られます。

そして、洗浄機のノズルから熱湯が噴出されるので、回転式の台で樽をくるくると回してあげます。

この樽をまわす作業は人間の手で回転させてあげるのですが、時々、スタッフは樽の中での熱湯の噴射がうまくできているか、樽の中にあたる音を聞いて確認します。

オリとともに熱湯がノズルの脇から排出されてくるのですが、何かの拍子でそこが詰まっているとノズルが水没してうまく洗えない状態になる可能性があるので、音を聞きつつ、排出されてくるお湯を見て、樽の中が洗えているかを確認します。

10分もたつと排出されるお湯がきれいな無色透明になっているのがわかります。

そうなると、次に樽を移動させて、別の樽洗浄機を使って、今度は水でさらにしっかりと洗いつつ温度を下げていってあげます。こちらの洗浄機はノズルが自動でくるくると回転する方式なので、樽は固定されたままです。

そして、このように1丁ずつの洗浄作業が終わった樽は、しばらく樽熟庫の中で、水を切るため穴を下に向けて静置され、やがて栓をして次の作業を待つことになります。

 

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以上のように、樽で熟成をさせてきたワインの樽空け作業には、何人もの醸造スタッフがさまざまな取り組みをしています。

今回の樽空け作業で醸造エリアの常設タンクに一度集約された樽熟したマスカット・ベーリーAのワインは、さらに、今までタンクで熟成させてきたマスカット・ベーリAのワインとアッサンブラージュ(=ブレンド)して、「ジャパンプレミアム マスカット・ベーリーA2014」として、後日瓶詰めすることとなります。

樽で熟成させたワインは樽由来の複雑味とやわらかさを持ち、タンク熟成させたワインは果実本来の味わいをたたえています。

我々は、「ジャパンプレミアム マスカット・ベーリーA」は果実味のある中にもふくよかでふくらみのある味わいにしたいと考えて、樽で熟成させたワインとタンクで熟成させたワインの両方をつくり、それぞれを用いてバランスをみて、味わいを設計していきます。

 

現在発売中の「ジャパンプレミアム マスカット・ベーリーA 2013」も同じように、こういった工程を経て、品質を造りこんでいます。ぜひその味わいをご賞味ください。

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