今、登美の丘ワイナリーでは場内のぶどう樹の剪定作業がほぼ終了し、あと1つの区画を残すだけとなっています。
今回は、栽培スタッフが行なっている地道なぶどうの皮剥き作業をレポートします。
ぶどう樹は、生長するにしたがって太くなり幹の表皮の部分が老化して幾層にも重なった表皮がささくれるようになってきます。
そのささくれだった隙間がぶどう樹にとっての害虫の棲家になってしまいがちになります。
特に、どこにでもいる部類の1mmにも満たないカイガラムシなどは口の針でぶどうの樹液を吸い、排泄物を撒き、それがまた病気を引き寄せ、大量発生でもしたら手に負えないので、こまめな防除が大切になります。
しかも、ぶどう樹のウイルスを伝播する媒介者であるという研究結果も発表され、小さなカイガラムシにぶどう栽培スタッフは震撼します。
特にカイガラムシの体はロウ質で覆われていて、薬剤の効果があまり期待できないという厄介な害虫です。
なので、登美の丘ワイナリーの栽培スタッフは、場内のぶどうの樹1本1本の粗皮(=表皮)を手で剥いていくという作業を地道にやっています。
この日は、A4a区画のプティ・ヴェルド。植え付けて5年目の樹で粗皮もそこそこに形成されてきたので、丁寧に1本ずつきれいにしてあげます。
登美の丘ワイナリーの自家ぶどう園の25haの数万本にもおよぶ全てのぶどう樹の粗皮を毎年剥くというわけにはいきません。
粗皮の層が重なり気になりだす状態になったところを順々にやっていくわけです。
ぶどう樹の主幹の粗皮を剥ぐには、ヘラを使ってそっとそっと皮を剥いていってあげます。
熟練したスタッフでも1本のぶどう樹にかかる時間は、およそ20分前後。本当に根気のいる仕事です。
少しずつ少しずつ、複雑に入りくんだぶどう樹の主幹の形に沿って、いろいろな角度から見ながら丁寧に剥がしていってあげるのです。
黙々とただひたすらにぶどう樹のお世話をしてあげているというオーラがにじみ出ています。
そして、最後に専用のブラシをかけてあげて、ぶどう樹をきれいにしてあげます。
こうしてきれいになったぶどう樹は、本当にすべすべでつるつるしています。
「ぶどうが、ちょっと寒そうだけどねぇ」と、栽培スタッフはやさしい言葉をかけていました。
確かに登美の丘ワイナリーはまだまだ寒い日が続きます。
でも、害虫にまとわりつかれるよりは、ずっといいのではないでしょうか。
先日、ボルドーのシャトーのオーナーが来場されて、ぶどう樹を見るなり「お前のところは、皮を剥いてるのか?」と呆れていました。
ボルドーにおいてもカイガラムシの対策には頭を痛めてるということでしたが、彼のシャトーでは、決して1本1本のぶどう樹の主幹の皮を剥くことはしないとのこと。
でも、登美の丘ワイナリーのスタッフは、ぶどう樹にとっていいと思うことは、やってあげれることは、できる限りやってあげます。
そのような、いかにも日本人ならではのキメ細かい取り組みですが、必ずやワインの品質に戻ってくると信じています。