今回は、前年植え付けたカベルネ・ソーヴィニヨンのぶどう樹の幼木剪定の作業について、レポートします。
登美の丘ワイナリーの最も高い標高600mのところに位置する眺望台のすぐ近くにあるC-14と呼ぶ区画のさらに一番高いところに、前年2015年に植え付けたカベルネ・ソーヴィニヨンの幼木があります。
場内の他の区画で精力的に行なっている剪定作業ですが、この幼木についても、成木と同じように、でも手法はまったく異なる剪定作業を行なってあげます。
前年伸ばした細くか弱い枝が小さくこじんまりとした印象を受ける1年生の樹も前年にこの大地に根を張ってくれていますから、それを信じて剪定ではしっかりと切り詰めてあげます。
そうすることによって、今年の春にはしっかりとした枝を力強く伸ばしてくれることを期待しているのです。
今年はまだまだぶどうの樹自体を見守るというステージになります。
そして、これから3年後あたりにはしっかりとした品質のぶどう果を収穫することができるように、それぞれのぶどう樹と向き合い導いていってあげます。
植え付けたぶどう樹は、もちろん1本1本同じではありません。この登美の丘の土地に早く順応する樹もあれば、ちょっと時間のかかってしまう樹もあれば、残念ながら根付かない樹もあり、しっかりとしたワインを生み出してくれるぶどう果になるまでは、これからまだまだ樹としてしっかり成長していくように導いてあげなければいけません。
多くのぶどう樹の中には1年目の成長が弱く、とても小さなか弱く細い枝が上にきている樹もあって、しっかりとした枝になる芽が出ないリスクもあるので、その樹の状態を見て、下のほうの枝があれば、そこに2芽残してあげるという方法をとったりもします。
成木の剪定作業は、1本1本のぶどう樹と向き合って、枝自体を観察して切るべき枝と残すべき枝を選び、樹形に配慮して来年以降の姿をも考えながら、時にはのこぎりまで用いて行なうのと違って、幼木の剪定作業は非常に早く進んでいきます。
剪定する枝が細いことや、剪定する部分があまり大きくないこともあり、幼木の剪定作業は1本にかける時間でいうと成木の剪定と比べたら10分の1くらいのイメージです。
まだまだ可能性を秘めている幼木だからこそ、ある程度今は自由度の高い状態で見守ってあげるということでもあります。
カベルネ・ソーヴィニヨンの区画を少し下ったところには、2014年に植え付けたプティ・ヴェルドのぶどう樹の幼木の区画がありますが、2年生なりの大きさに成長してはいますが、やはりそれぞれの樹の状態によってしっかりと生長してくれた樹もあれば、まだまだの樹もあります。
なので、やはりそれぞれにあった剪定をしてあげないといけません。
幼木の段階では、ぶどう樹がこの土地の土壌に、太陽に、雨に風に馴染んでくれるのを待ちます。栽培スタッフは、「今は、この土地とぶどうが折り合いをつけてる段階だよ」と言います。その折り合いがうまくいくように、われわれとしてはできることに手を差し伸べて、見守っていくこととなります。
ぶどうという植物は、植え付けたその年すぐに望むべき品質の実がなるわけではありません。
そういう意味ではビールの麦や清酒の米などとは、仕込むべき原料を調達することに関しての発想が全く違ってきます。
また、ようやく望むレベルのぶどう果を得てワインに仕込んで熟成させて・・ワインづくりは非常に時間を要します。
そして、ワインの品質の8割はぶどう果によって決まるとも言います。
なので、我々は、この登美の丘の土地に合うぶどう樹を常に探索して、評価して判断して、ワインとしての品質をつくり込んでいきます。
そういう根気強く取り組む覚悟がワインづくりには必要になってくるのです。
1909年の開設以来、この土地でのぶどうづくり・ワインづくりの歴史は続いていますが、この土地の個性を引き出してあげる取り組みは、まだまだあると思っています。
世界的な国際ワインコンクールでも評価され数々の賞を受賞させていただいていますが、品質はまだまだこれからも向上していきます。
ぜひその登美の丘の取り組む姿と品質をこれからも一緒に見守っていただけましたら、幸いです。
サントリー登美の丘ワイナリー 登美(赤) 2011 | サントリー登美の丘ワイナリー 登美(白) 2012 |
サントリー登美の丘ワイナリー 登美の丘(赤) 2013 | サントリー登美の丘ワイナリー 登美の丘シャルドネ 2013 | サントリー登美の丘ワイナリー 登美の丘 甲州 2014 |