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登美の丘ワイナリー通信

ワインづくりの現場から

ワインづくり

ただいま、樽詰め作業の真っ最中です。

現在、登美の丘ワイナリーの樽熟庫では、毎日のように樽詰め作業を行なっています。

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2015年に仕込んだワインのうち、特に赤ワインについて、タンク発酵を終え、マロラクティック発酵が終了しています。あるものは、そのままタンク熟成を行ないますが、あるものは樽に詰めて樽熟成を行ない、ワインを育成していきます。その判断は、どんなワインのスタイルにしてあげたら、そのぶどうにとっていいのか、お客様にとって喜んでいただけるのかということを追究していくことに尽きるかと思います。なので、タンク熟成で仕上げてあげたほうがいいと判断するものも多くあります。
今回の樽詰めをしてあげる登美の丘のカベルネ・ソーヴィニヨンは、樽熟成をしてあげたほうがいいという判断です。登美の丘ワイナリーではフレンチオークの225Lの樽(=バリック)を使用していますが、樽熟成においては、空気と適度に触れ合うことによって赤ワインが緩やかにゆっくりと酸素と結合して、渋みの成分である粗いポリフェノール分が落ち、果実の持つ本来のやわらかな旨味が現れたり、樽材との接触によって、バニラのような香りや、ココナッツのような香り、スパイシーな香りなど、樽に由来する香味をワインに付与して複雑な味わいにすることが、この樽熟成の効果に挙げられます。
しかも、新樽を使うのか1空き樽(=1回樽熟成に使用した樽)を使うのかもその効果に違いがあります。もちろん、新樽のほうが樽からの成分の抽出量が多いのは明らかですが、それがワインにとっていいのかどうかは、また別の話です。この日のカベルネ・ソーヴィニヨンは1空き樽に樽詰めしました。

まず、ステンレスタンクで温度管理を入念に行なって発酵させた赤ワインは、そのままタンク内でマロラクティック発酵を行ない、そのまましばらく静かにタンクにキープしています。そのステンレスタンクからワインを樽に詰めてあげるのですが、実は、登美の丘ワイナリーの樽熟庫のひとつ4号セラーは、醸造エリアの発酵タンク群の並んだ発酵室よりも高い位置にあります。なので、樽詰めするにはワインを運んであげないといけないのです。発酵室で樽に入れてから樽熟庫に運ぶのでは樽が非常に不安定ですし、重いにもほどがあります。なので、約1KLの小さな輸送用のタンクにワインを一旦入れて運ぶわけです。発酵・貯酒タンクからチューブで小さなタンクに移してあげる際にも最後にチューブ内に残ったワインがもったいないので、チューブを担いで中のワインをちゃんと輸送用のタンクに移してあげます。
 

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 そして、樽熟庫の4号セラーに運ぶのもフォークリフトです。坂道でも力強くワインを運んでくれます。
1月中旬に降った雪が醸造エリアでは2月上旬でも残っています。ぶどう畑は陽の当たる尾根づたいの斜面にあり雪は溶けていますが、醸造エリアは麓の谷の部分に位置しているため、なかなか雪が溶けてくれません。冷涼な空気が全体を包んでいます。
 

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樽熟庫に運び込んだ輸送用のタンクに樽詰め用のホースをしっかり接続したら、今度は、タンクを1m以上の高さに持ち上げます。まさにフォークリフトがなければできない仕事です。こうすることによって、タンクの中のワインは重力に沿ってホースを流れて、樽の中に入っていってくれるのです。
この樽詰め作業の前提には、まずきれいに樽を洗って、ちゃんと列に沿って設置しておくという作業が事前にちゃんとしてあるというのもポイントです。


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樽の中に入っていくワインの音が樽熟庫の静かな空間にかすかに聞き取ることができますが、満量に近づいてくると音が高くなってくるので、スタッフはそろそろかと様子を確かめます。慎重に最終調整を行ないながら、樽の口いっぱいにワインを入れて栓をします。
1樽ごとに樽の番号と樽詰めした日付、中味の品目などを確認して記帳していくのも忘れません。


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かつては、樽香の強いワインが高級ワインだと勘違いする風潮もありましたが、今はワインの評価が「ティピシテ」(=その土地らしさ)という軸にあり、いかにその土地に根ざした果実味を表現するかということに重きが置かれています。樽熟成も度が過ぎればダメということです。樽の使い方がワインメーカーそれぞれの個性に直結したりします。この後も樽熟庫でのさまざまな作業や、樽熟成の頃合いを判断し、品質をつくりこんでいく過程についても追ってレポートさせていただきたいと思っています。

サントリー登美の丘ワイナリーを代表する赤ワイン

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