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登美の丘ワイナリー通信

ワインづくりの現場から

ワインづくり

瓶内二次発酵のスパークリングでの「デゴルジュマン」

今回は、先日レポートさせていただいた「ルミュアージュ」の作業で、瓶内二次発酵を終えたスパークリングワイン「登美の丘 スパークリング甲州 2013」について、瓶内のオリ下げを完了させたボトルから、中にあるオリを取り除く作業「デゴルジュマン(Degorgement)」についてレポートします。

 

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 約1カ月かけてルミュアージュしてオリを下げたボトルを、ピュピトルからボトルを倒立のまま抜き出してきて、最初にオリの集まっている瓶口部分を凍らせる作業を行ないます。ネックフリーザーという―27℃前後の冷媒が入っている専用機械にボトルの首の部分のみ漬けて7分。そうすることによって瓶口に集めたオリをワインの液体ごと凍らせて固めてしまうのです。凍らせ過ぎても次の作業がうまくいかないので、登美の丘ワイナリーでは7分に設定しています。

 

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そして、瓶口が凍ったボトルを丁寧に取り出して、冷媒の液体をきれいに洗い流した後、専用の栓抜きを使って王冠を開けると、瓶内二次発酵でボトル内で生じたガスの勢いで、瓶口部分に集まったオリが飛び出てきます。但し、ボトルによってまちまちで、王冠を開けるとともに一気に勢いよく出てくるものもあれば、コンマ数秒の間をおいてジュワジュワと出てくるものもあります。
 

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安全のためにブースに向かって王冠を開けるのですが、ブースの中を見てみると、王冠の他に、酵母のオリを効率よく排出させるための補助パーツ、ビデュール(Bidule)というプラスチック製の小さなキャップがあるのがわかります。中栓のようなそのキャップの中に酵母の残骸のオリが凍った状態で収納されて出てきます。しばらくすると氷が溶けてオリのある濁った液体に戻ります。凍らせることでの効果的にオリが除去できていることが実感できます。
 

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その次に、「ドサージュ(Dosage)」という工程に移ります。ボトルによってオリとともに噴出してくるワインの量は異なります。なので、最終的に750mlの容量に戻すべくワインを補填するということを行なうわけです。ワインの入った筒とポンプが配置されている中心部から放射線状に8本のノズルの出た円形状のドサージュ機に1本1本抜栓したボトルを人の手で設置していきます。回転させるのも、もちろん人の手です。「ハイ、回しまーす」という声をかけながら行なっていくのですが、スタッフの声が冷たい室内に心地よく響き渡ります。ちなみに炭酸ガスのロスがないように室内は冷たく、この日の室温は3.5℃。冷蔵庫の中で作業をしているようなものですからスタッフ全員防寒対策は欠かせません。
 

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ドサージュ機に円形に設置されたボトルを順次回転移動させます。設定されたポイントに来たボトルは、1本1本噴出すワインの量が異なるので、750mlの容量を保証するために、中に入ったノズルで余分なワインを一旦抜いて一定量にし、次のポイントに来たら、ノズルからワインが一定量補填され750mlになる仕組みです。
画像ではわかりにくいかと思いますが、前のポイントで一定量にされた後のボトルが画面中央の位置に来た瞬間が上の画像です。下の画像では中央のボトルにワインが注入されて液面が上に上がっていますし、右隣のボトルでは一定量になるようにワインが抜かれて液面が下がっているのがおわかりいただけるでしょうか。その際に上部の右側のポンプが最初押し下がり、次に左側のポンプが上がってワインを吸引しているという様子は、見ていて感心します。
あるスタッフも「こんなこと誰が考えたんだろう?」と感心していましたが、まさに同感です。

 

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このドサージュの際のワインを補填する際に「門出のリキュール(Liqueur d' Expedition)」と言って、同じベースワインに糖分を加えたものを味わいの調整のために入れたものもあったりしますが、この「登美の丘 スパークリング甲州 2013」では、甲州種ならではの柑橘系の香りと旨味、瓶内二次発酵による酵母からの複雑味を生かし、キリッとした辛口の味わいを楽しんでいただきたいので、糖分は全く入れない設計にしています。シャンパーニュでよく言われる「Extra Brut」という規格(糖度0~6g/L)になります。この「登美の丘 スパークリング甲州 2013」のように全く糖分を加えない商品を、「Ultra Brut」とか「Brut Zero」と、訴求しているところもあります。

 

750mlに補充されたボトルはそのままコルクを打ち込んで密閉するのですが、それも1本1本の手作業で人の手で打ち込みます。通常の発泡性のないワインは、円筒形のコルクを全て瓶の中に打ち込んでいますが、スパークリングワインの場合のコルクは、通常のコルクと違って直径3cm×長さ5cmのものを使用し、その直径を一旦1.5cmに圧縮して直径2cmの瓶口に打ち込む際に半分打ち込んで上に残ったコルクに金属プレート(=ミュズレMuseletと言います)を置いて、さらに上から押しながら座金で巻き締めて、コルクが中の炭酸ガスの圧力で飛び出さないようにします。
左手でレバーを降ろしながら上から圧力をかけて、右手で座金のワイヤーを瓶の口の出っ張りにかかるようにして4回転くるくると巻き締めていくのです。

 

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こうして座金を巻き締めたボトルは、最終的な検査で、巻き締めがしっかりと出来ているか、ワインの中のオリがちゃんと除かれているか(=濁りがないか、オリが瓶の内壁にこびりついてないか)、ワインの量はちゃんと入っているか等を人の目でしっかりと確認していきます。

 

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こうして仕上がったスパークリングワインは数本を抜き取り、しっかりと炭酸ガスを含んでいるか確認します。非常に高い炭酸ガスの持ったスパークリングワインですから、もしもの場合を考えて防護のためにゴーグルをしたりと、ガス圧を測ることだけでも大変です。この日の計測値では最終的に0.608Mpa(メガパスカル)になったことを確認していますが、0.608Mpaといってもピンときませんよね。通常の炭酸飲料の規格では0.29Mpa以上ということが法的に定められていて、それからいうと炭酸飲料の3倍の炭酸ガスが含まれているということになります。よく使われる単位でいうと、この日のサンプルは約6気圧あることになります(6.2kgf/c㎡)。シャンパーニュでは5~5.5気圧、通常のスパークリングワインで3気圧以上、ビールでは2.5気圧というレベルですから、瓶内二次発酵のスパークリングワインがいかに炭酸ガスを含んでいるかお分かりいただけるかと思います。でも、それだけの炭酸ガスを含んでいても、やわらかい泡の感じに思うのは、瓶内二次発酵により溶け込んでいる酵母由来のアミノ酸が関係していると言われたりしてます。
 

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そして、全てのオリ引き作業が終了した「登美の丘 スパークリング甲州 2013」は、再び瓶熟庫に戻して、さらに中味を落ち着かせてあげます。ここからさらに美味しくなるための時間を待ってあげるのです。発売に至るまで、多くの労力と多くの時間をかけて「登美の丘 スパークリング甲州 2013」は味わいに磨きをかけていきます。

 

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ラベルを貼る作業や、スパークリングワイン特有のキャップシールを装着していく最終仕上げの作業は、またその際にはレポートしたいと思いますし、この「登美の丘 スパークリング甲州 2013」の発売の時期が来ましたら、またご案内させていただきます。今、しばらくお待ちくださいませ。
 

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日本ワインコンクール2015で「銀賞」を受賞した

「登美の丘 スパークリング甲州」の前ヴィンテージ

 

 


(ご好評につき、既に完売しております)

サントリー登美の丘ワイナリー 甲州スパークリング 2012

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