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登美の丘ワイナリー通信

ワインづくりの現場から

ぶどうづくり

2015年は、貴腐ぶどうの収穫を断念しました。

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 今年2015年は、10月に入ってからの月間雨量が31.5mmしか降らず(昨年と比べて約10分の1)、毎日非常に日照に恵まれて平年よりも気温が高めに推移しました。そのため、人が感じる気候的には非常に天候に恵まれた10月だったと言っていいと思いますが、貴腐ぶどうにとっては湿度が低く気温が高すぎたために、貴腐化が進行することができませんでした。

 

もともと貴腐という現象は、健全に熟したぶどうの果皮にボトリティス・シネレアという菌が繁殖して皮のロウ質に小さな穴をあけて、そこからぶどう内の果汁の水分が蒸発することによって乾しぶどうのように凝縮して糖度が高くなり、また貴腐化にともなって貴腐ワイン独特の香りや味わいとなる成分が形成されていきます。そのボトリティス・シネレアがぶどうの房の一部に貴腐化を起こし、全体に広がっていくための条件として、適度な湿度(=適度な降雨や霧)が必要なのです。この「適度な」というところが重要で、晴れないと水分蒸散が進みませんし、雨ばかり続いてしまうと腐敗してしまうリスクもあります。つまりは、好天での水分蒸散と雨天でのボトリティス・シネレアの進行が、ほどよいバランスにならないと貴腐ぶどうになることができないのです。こればかりは人間がいくら望んでも、どうすることもできない領域です。
今年のぶどうは、どのぶどうも程度の差こそあれ、一部に貴腐が発生して貴腐化の途中で進行が止まった状況が覗えます。

 

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貴腐ぶどうの進行は天候条件が全てですが、その天候やぶどうの状態をみて貴腐ぶどうの収穫の判断を行なうのは我々です。状況によっては、もしかしたらその区画のぶどうを全滅させてしまうかもしれないリスクを負いながらも、毎年、貴腐ぶどうの収穫に挑戦しています。それは、常に貴腐ぶどうの進行を観察できて、全てのリスクと責任を負うことができる自家ぶどう園だからこそ取り組むことができる挑戦と言えます。
昨年に引き続き今年2015年も9月からリースリング・イタリコのぶどうの一部に貴腐が発生し、貴腐化の進行を見守っていました。しかしながら、10月に入り非常に好天が続いたことによって、貴腐化が進行しないまま、降雨がない状態で枯渇し房枯れのような状況が見られたため、今年は貴腐ぶどうの収穫を断念するという決断をし、リースリング・イタリコを収穫しました。
こころなしか、黙々と収穫作業に取り組む栽培スタッフの背中には貴腐を断念したことの寂しさを感じてしまいました。
 

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ちなみに、昨年2014年は、貴腐ぶどうにとって適度な降雨と日照であったために、貴腐化が止まることなく順調に進行してくれました。
貴腐化の進行はぶどう樹1本1本の単位ではなく、1房1房・1粒1粒の単位で進行が異なるために、10月から11月まで貴腐化の進行に合わせて何度にも分けて収穫作業を行ないました。収穫した後も、貴腐化した粒を選別して入念に仕込んだ貴腐ワインは、現在登美の丘ワイナリーで熟成中で、今後、熟成の状態をみて、何年後かには商品化の予定です。
 

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2014年10月24日撮影

 

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2014年11月10日撮影

 

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2014年11月17日撮影

 

登美の丘で1975年に日本で初めて貴腐葡萄の収穫に成功してから今年2015年で40年。その間に商品として発売させていただいたのは、わずか11ヴィンテージのみ。
今年、断念したように貴腐ぶどうは毎年収穫することができるものではございません。現在は「登美ノーブル・ドール2003」を販売させていただいております。
また、本当にわずかな数量ですが、1990年の貴腐ワインも再び蔵出しさせていただき販売中です。

 

「ワインの帝王、帝王のワイン」と称せられる貴腐ワインは、決して人間がつくろうとしてもつくれない「天の恵みのレアワイン」と言えるかもしれません。
黄金色に輝く貴腐ワインの、その類まれなる甘美な味わいをぜひご賞味いただければと思います。この年末年始、ご家族やご友人、親しい方々が集う機会がいつにも増して増えることかと存じます。
大切な方々への特別なおもてなしとして、また贈りものとして、甘美なる貴腐ワインで美味しいひとときを共有するのはいかがでしょうか。素晴らしい思い出づくりのお役に立つことができましたら幸いです。

 

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現行販売中の貴腐ワイン

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